ごっとさんのブログ

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被害者の落ち度を探そうとする「公正世界仮説」

2022-05-09 10:26:34 | その他
ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の感が強くなってきました。プーチンは勝利宣言をするようですが、これからどんな展開になるのか予測しにくいといえます。

この問題はニュース番組や報道番組でもトップに扱われていますが、ある番組でいわゆる「識者」がウクライナの悪い点を指摘していました。ロシアが一方的に戦争をしかけてきたのに、この識者は何を言いたいのか意味が分からず気持ち悪い人もいるものだと思っていました。

しかしウクライナより身近ないじめや痴漢でさえも、被害者の落ち度などを探して指摘する人はかなり多いといえます。当然悪いのは加害者であって、被害者の落ち度を探して批判するのは間違っていると分かっているはずです。

またこうした方が危険が減るという対策のはなしと被害者の落ち度を攻める話は全く別であるはずです。しかもこういった行動はほとんど無意識に出ることがるようで、なぜこんな行動・感情になるかの説明として「公正世界仮説」という理論があります。

この理論は「公正世界」であるこの世界においては、全ての正義は最終的に報われ、すべての罪は最終的には罰せられる。

言い換えると公正世界仮説は起こった出来事が公正・不公正のバランスを復元しようとする力が働いた結果であり、これから起こることもそうであることを期待するというものです。

こう書くと何のことか分かりにくいのですが、「世界は公正にできているので、理由もなくひどい目に合うはずがない」。被害者には必ず原因があるはずで、自分はきちんと生きているので被害を受ける心配はない。人は誰しもそういう仮説を信じたい傾向があるという考え方です。

つまりひどい目に合うのが偶然だとすると、自分にも可能性があることになります。自分には関係ないのだと「安心」を得るために、被害は必然だと思い込みそれが高じて理不尽な批判や攻撃をしてしまうという仮説です。

この公正世界仮説は半世紀以上前に提唱され、研究が重ねられてきました。ここ数年ネットにおける被害者への誹謗中傷や、貧困問題にまつわる「自己責任論」などへの批判の高まりとともに改めて注目を集めています。

新型コロナに感染した人に対して、「自業自得」「感染するような行動をしていたからだ」という攻められる風潮があったのもこれが影響しているようです。

「自分は感染しないはず」と思い込み安心を確保するためには、運悪く感染した人に「落ち度」があってくれないと困るという心理です。どうも日本人はこういった心理に動く傾向が強いという調査結果もあるようです。

こういった傾向が公正世界仮説で説明できるのかは不確かなところはありますが、自分が安心したいという気持ちは誰もが持っていることは確実なような気がします。


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