ごっとさんのブログ

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進化する細菌vs抗生物質

2020-09-19 10:25:28 | 
抗生物質を長年使い続けていると、その抗生物質が効かない耐性菌の出現が知られています。

ある報告によれば、耐性菌による死者は増え続け、2050年には世界全体で1000万人にもなるといわれています。

この人類と細菌の戦いに関して、ハキリアリというアリの生態と比較した面白い記事が出ていました。ハキリアリは切り取ってきた木の葉を床として、キノコを栽培するいわゆる農業を5000万年前から続けています。

この最大の脅威が他の細菌の感染による栽培地の崩壊です。そのためハキリアリは、体についている細菌が作り出す抗生物質を使って、有害細菌を駆除していると考えられています。

この抗生物質がどんなものかは分かっていませんが、おそらく数百万年ぐらいは同じ抗生物質を使っていると推測されています。それなのになぜ耐性菌が出てこないのかが不思議なことです。

一方人類は1928年に抗生物質を発見し、その後医療に広く使われるようになりました。つまり人間は抗生物質を使い始めてからまだ100年もたっていません。それにもかかわらずほぼすべての抗生物質に対して、すでに耐性菌が現れています。

ある抗生物質Aについて考えて見ます。世界中でAが使われるようになれば、A抵抗性の細菌(耐性菌)が世界中に広がります。もし世界中でAが使われていなければ、A感受性の細菌が世界中に広がります。これは当たり前のことのようですが、実際は少し異なっています。

A感受性の細菌がいると、時々変異が起こり、中にはA抵抗性に変異する個体も出てきます。抗生物質Aを全く使っていなくても、A抵抗性の細菌は時々出現するわけです(Aを使っていないのでわかりませんが)。

しかしこの場合、A抵抗性の細菌が広まることはまずありません。抗生物質Aを使っていれば、A感受性の細菌が広まらないのは当然といえます。しかしAを使っていないのであれば、A感受性とA抵抗性の両方の細菌が増えてもよさそうな気がします。

しかし実際にはA抵抗性の細菌が広まることはまずありません。細菌も生物なので、物質やエネルギーを使って生きていますが、この代謝量は有限です。

もし代謝量の一部を抗生物質への抵抗性のために使ってしまうと、生存に使う代謝量が減ってしまう、つまり抵抗性の細菌は感受性の細菌より生存に関しては不利といえるのです。それが抵抗性を手に入れた代償であり、何も失わずに何かを得るという虫の良い話はないようです。

これが耐性菌だらけにならない理由ですが、これとハキリアリが生存している話しとのつながりはよくわかりませんが、ハキリアリは何種類かの抗生物質をうまく使い分けているのかもしれません。

人間もうまく抗生物質を使い分ければ、耐性菌問題は解決するような気がします。


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