
日本人に最も愛されている名曲は、『荒城の月』だそう。
但しある年齢以上の…と、注釈が必要かもしれないが…。
土井晩翠の詩、滝廉太郎の作曲によるこの歌は、格調高い
7・5調の詩と憂愁を帯びたメロディが、例え時代は変っても
日本人の心情に響く歌曲として歌い継がれてきたのだろう。
土井晩翠は仙台の青葉城、滝廉太郎は大分の岡城、それぞれ
故郷の城をイメージして作詞作曲したと、伝えられている。
1901年当時の日本には、各地に荒れ果てた城跡が残っていた。
国敗れて山河あり、諸行無常、栄枯盛衰、そんな無常観が
『ワビサビ』好きな国民性に、ぴったり合っているらしい。

春高楼の花の宴 めぐる杯 影さして
千代の松が枝 わけいでし むかしの光 今いづこ
天上影は変らねど 栄枯は移る 世のすがた
写さんとてか 今もなほ ああ荒城の 夜半の月











この歌曲が広く愛された証しに、今も各地に歌碑が残っている。
私が見たのは小高い青葉城の一隅にあった、写真の歌碑。
土井晩翠の銅像と並んで、仙台の街を見下ろしていた。
10月19日は、英文学者であり詩人であり『荒城の月』作詞者として
知られる土井晩翠の忌日。80年の生涯だった。
今夜も青葉城や岡城の天上に、秋の月が映えることだろうか。