
1990年。
自分は、有明テニスの森の斜め向かいにあった「MZA(エムザ)有明」というクラブ・バー・レストラン・ライヴハウスが一体となった、当時最先端と言われた「ウォーター・フロント」と呼ばれる東京湾岸地帯で働いていた。
しかし、この「かたちんば」が、黒服になれる訳でも無く、クラブのDJをしていた訳でも無かった。
そこの掃除のアルバイトである。
朝から夕方まで、それぞれの場所を巡っては掃除をしていた。
当時、この地域には元々倉庫であったものを、その姿自体を使って、アート・スポットやオシャレな空間に仕立てるのがはやっていた。
いわば、スケルトン・インフィルである。
この「MZA有明」も、元は倉庫だった空間に、装飾を加えてオシャレな連中の集まるいかがわしい空間を作り出していた。
前夜の「祭りの後」を、静かに掃除していると、ピアスやネックレスが落ちているのを発見したり、前の夜の情事を思わせたりした。
裏庭に出ると、東京湾を一望出来、対岸には東京タワーを中心としたビルの林立する姿が見られた。
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その1990年あたりから、約20年。
どんどんとこのエリアは発展し、まさに21世紀の亜空間が広がっている。
昨日は、ひさしぶりに東京ビッグサイトでの展示会を見に行くため、汗をかきかき電車を乗り継ぎ、新橋から出るモノレール「ゆりかもめ」に乗った。
拡大していく未知の世界・無人の無機的な様相を呈した、20XX年、人類が滅亡しても崩れないであろうビルの群れる姿があった。