二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

物つくりという仕事

2010-07-08 08:34:21 | ■工房便り 総合 
人間というのは、他の動物に比べて、感覚という点でかなり劣っています。

犬のように優れた、聴覚や、嗅覚という物はありませんし、

鳥などのような、優秀な、視角というのも有りません。

しかし、それを補って余りあるのは、触覚です。

体を支えるという、機能から解放された手は、

5000分の一ミリの厚みの差を、感じ取ることができるといいます。

みなさんもご存じだとは思いますが、

刃物を研ぐときに、砥石を使います。

砥石は、荒砥が、100番程度(1平方センチの中に何個の粒子が入っているか)

中砥が1200番くらい。

これでも、まだ荒さは、触れば解ります。

仕上砥(木工屋は合わせ砥と言います)は、1万番から5万番くらいあります。

1平方センチの中に、5万個の粒子です。

普通、3万番くらいになれば、金属を磨けば、それこそ鏡のようになります。

そのくらいの細かさまで磨きこんだ金属は、分子間結合力によってぴったり結合します。

とまあ、そのくらいに微細なものを、手は、触る事で、かぎ分けます。

人の手は、不思議なものです、このブログ読んでいる方殆どの方が、二胡弾いておられると思います。

考えてみてください。

左手を、移動するとき、それこそ10の1ミリも違わないところ、

慣れてくれば、100分の1ミリも違わないところへ、移動して指を下ろせるのです。

手の動きの不思議さ、皆さんも実際に経験しておられるのですよ。

それだけの、高度な、感覚が人の手にはあります。

ましてやその指先の、物を感じる力というのは、計り知れないものがあります。

多分、見てみなくても、二胡に張られた皮の厚みの違い、2、台の二胡触ってみれば、

上から触っただけでも、感じ取ることが出来るはずです。

また、見た目には全く平らに見える、きれいに削った木の板。

それでも手で触ってみると、木目の一つ一つが解ります。

これをさらに訓練したとしたらどうでしょう。

木を削っていく時、その硬さ、弾力、その厚み、手から伝わってくるようになりますし、

叩くことを同時にやることによって、削り具合と、音の関係まで解るようになります。

このことは、全ての人が出来ると、私は思っています。

人は人としての、生活を始めた時点から、その動物としての、感覚。

他の動物が、持ち得ない、触覚という物を、より鋭敏にしてきたのだと思います。

そして、その手が、道具を作り、物を生み出し、生活を支え、

感性を楽しませる物作りということの、大元ではないでしょうか。

現在でこそ、その手の感覚を、活かして仕事をするというのは、

どんどん減っています。

大量に作り、大量に販売しなければ成りたたない経済構造になっていますから。

それでも、人は、手を使いたいものなのでしょう。

その手を使ってこそ、人としての気持ちが、満足させられるところが、

人の気持ちの中にしっかり根付いているのだと思います。

だからこそ、カルチャーセンターの、手工芸、あるいは、音楽教室、あるいは、料理教室

またゴルフ等、体を使い、手を動かすということに人は興味を捨てきれないのではないでしょうか。

言うまでも無くこれからの世の中、効率という点では、またある意味での正確さ、

精度という点で、機械が中心のように思われます。

しかしあるレベルを超えると、その精度正確さというのは、未だに人の手以外では出来ないのです。

例えば、スペースシャトルの先端の、とがった部分。

これは未だに手でハンマーで作られるというのは有名な話ですが、

砲丸投げの鉄の球等も、最終的には、手で仕上げない限り芯がでないといわれます。

刃物など、今は使い捨てが殆どのようですが、

ホントに切れるようにするには、手で研ぐ以外ないといわれます。

また、全く平らに見える、エレベータの扉のステンレスの板。

あれもホントに平らにしているのは、人の手なのです。

叩いて歪みを直すのです。

そういう意味で、二胡なども、微細な弓の動きを拾い出せるようにし、

最大ボリュウムで弾ききった時にでも、

その全体を鳴らせるというレベルにまで作り上げるためには、

1枚々の木の、それぞれの性質を、手で感じながら削り上げない限り、

良い楽器は作ることは出来ません。

手で硬さを感じ。

耳でその振動を聞き分け。

頭の中にそれらが鳴る音を組み上げていかない限り、

良い楽器というのは出来ません。


西野和宏
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2 Comments

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今は昔、、 (Jimmy)
2010-07-08 13:50:38
私の場合、若い頃はお尻の感覚で0.01Gの振動レベル差を感じます、、、というのがプチ自慢だったのですが、今じゃ全然分かりません(ww

左手に至っては平気で5mmくらいはずれます。
全く精進が足りません。。。
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御冗談でしょう (nishino)
2010-07-08 20:03:22
先日、さすがと感じましたよ。

私こそ少しは演奏練習しないと、

音はでかいが、、、、と言われていますから。
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