二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

揺れたい気持ち。

2013-03-07 09:23:56 | ■工房便り 総合 
最近バイオリンをやっていた方々の中から、二胡を演奏し始めた方が随分と増えています。

光舜堂にももちろん沢山いらっしゃいます。

何ででしょうか?

バイオリンをやっていた人の共通することは、ビブラートが同じ、

そして、左手の安定度が抜群、という事は音程がしっかりしています。

特に、バイオリンを子供の頃から始めた人達の左手の安定度というのも凄い物があります。

当然と言えば当然なのですが、耳が良いということもあるのかもしれませんし、音程がもう頭の中、身体に身に付いているのでしょう。

そして右手の弓の安定度というのも皆さん共通しています。

弦を鳴らすというのが、感覚として出来上がっているのでしょう。

右手の弓が一定に弦を振動させるのですね。

これがもしかしたら二胡を小さい頃からやっていた人とバイオリンをやってきた人の違いかもしれません。

二胡は東洋のバイオリンとよく言われますが、私自身バイオリンも作って来て、どうもそうは思えなくなってきています。

私が作った最初の頃の二胡は、そのデザインの違いもあってか、良くバイオリンみたいだと言われました。

或いは二胡の音ではないと。

最近になって私自身で感じることはバイオリンとはとんでもなく違うという事です。

どうやって作ろうとどんな材料で作ろうと、例え蛇皮を使っていなかろうと、とてもバイオリンとは似ても似つきません。

皆さんご存知のジョージガオさんの二胡は、蛇皮ではありません。

世界中を公演して回るジョージさんとしては,ワシントン条約に縛られて、簡単に楽器を移動できないのが大変だったそうです。
蛇皮を税関で切られた経験もあるそうです。

今はそれほどうるさくなくなってきていますが、ひと昔前は、自分の楽器です、と言っても許可されないことも多かったそうです。

もしかしたらそれだけではないのかもしれません、二胡そのものをどんどん形まで進化させようとしているジョージガオさんとしては音としても人工皮の音を追求しているのかもしれません。

しかし、ジョージガオさんの音とバイオリンの音を比べたら、似ても似つかないものですね。

同じような音域と同じような弦を使っているにもかかわらず、初めて聴いた人でもバイオリンと二胡の音の違いというのは解るものです。

ですから、ラジオなどで聞いて、或いは映画音楽などの中で二胡の音を聞いてこの音色は良いな、この楽器なんだろうと思いそれから二胡を始めた人も沢山いらっしゃるのでと思います。

バイオリンみたいな音だけれど何か違う、これはなんの楽器だろうという感じかもしれません。

バイオリンと二胡どこが違うかというと、指板が無いということこれに尽きます。

弦が、揺れるのです。

調弦しても、弾き方ひとつで音の高さまで変わります。

皆さんも調弦苦労していると思います。

やっと合ったなと演奏始めるとなんだか狂っているようです。

もう一度空弦だけで調弦して見るとやはり合っていたりもします。

二胡には指板が無いですから、弦をしっかり押さえておくことが出来ないので強く弾くと弦は引っ張られて音が高くなります。

もちろん上手な人は、その気になって調弦すればデジタルの調弦器の張りがピタリと動かずに弾くこともできますが、

演奏始めると脇から聴いているとそしてデジタルの調弦器で見ていると相当揺れます。

同じことをバイオリンでもやってもらいましたが、相当強く弾いても多少は揺れますが、殆ど変化するという感じは有りません。

二胡の場合は、この変化が、10分の1音ぐらいの変化になる時も有ります。

これははっきり音程の違いが解ります。

指板が無い為にしっかりと指で押さえられないからということも言えます。

凄いのは、一度劉継紅がやって見せてくれたのですが、二胡の棹を違う方向へかたむけただけでも音が上がったり下がったりするのです。

演奏する時に身体を揺すり棹の傾きが変わるだけでも変化します。

ですから、姿勢が大切とよく言われるのかもしれません。

音が揺れるということが二胡の特徴でしょう。

その揺れる音が、人をひきつけるのではないでしょうか。

バイオリンも洋楽器の中ではサックスに次いで倍音の多い楽器です、人の声により近いと言われてきています。

しかし倍音の多さという点では、二胡にはバイオリンは敵いません。

音そのものが、複雑なのです。

ですから弾き方によってその演奏する人によっても音色が変わったりするということも二胡の特徴かもしれません。

もちろんどんな楽器でも、演奏者によっては音色が変わりますが、二胡の場合その違いがとても顕著です。

惜しむらくは二胡の場合バイオリンほどの音域の広さがありません。

バイオリンは殆ど3オクターブ以上普通に出せます。

二胡の場合、普通に出せるのは2オクターブ位でしょう。

2オクターブを過ぎた頃から二胡は殆ど音にならない楽器も沢山有ります。

振動板が皮で出来ていることも有り、また構造的にも高い音が出にくいというのも有りましたが、

それでも良い楽器は2オクターブ半位はなんとか出ます。

音が揺れるということが災いしているとも言えます。

でもその揺れる音というのは、不完全な為に更に魅力を引き出します。











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