4年ぶりに業平が帰ってきました!
5年ほど前に、超高級な小葉紫檀で、その中でも特別に良いと思われる部分で作り上げた、6台の二胡の内の一つです。
その一台は、木村ハルヨさんが弾いていますし、
この業平は、峠岡慎太郎君が弾いていました。
今回、中国人の演奏家SIN君に請われて、一緒にビデオ出演することになりました。
西野二胡は美しいというSIN君のたっての希望で、業平を貸出しすることにしたのです。
以前から業平は、返却をお願いしていたものですから、この際返していただきました。
というのは、実は今手元に、「月光」以外は無いのです、「月光」はほぉさんの物ですから、貸し出すわけにはいきません。
後は手元には、ご注文で制作中の欅の「和胡」や、弦堂さんで販売する予定の低音二胡、そしてあるお客様に頼まれた、ハカランダの二胡くらいきりありません。
後は金沢のNMLさんにみな送ってしまっています。
不思議なことに、手放しで西野二胡を褒めてくれるのが、中国人の演奏家や、中国音楽にすごく詳しい方ばかりというのが、おもしろいですね。
弦堂さんは西野二胡の音を評して、もともとの古い中国の二胡の音がするとおっしゃっています。
それはそうですね、何しろ90年近く前の、二胡をモデルとして作っていますから。
この業平もそういう音色の楽器の一つです。
ただこの業平、たぶん二胡の中ではとても珍しいものの一つののです。
それはこの楽器の胴が、全部板目の木で作られているからです。
普通二胡の胴は、正目といって木目が真っ直ぐに整えられた木だけを使うはずなのです、
様々な理由は考えられます。
一つは、板目だと後から木が反りかえってきて、胴の割れが発生しやすいから、
そして、木が振動するという事では柾目の方が振動しやすいという事、それはバイオリンなどがギターもですが、みな表板が
柾目でとられているのは、そのようなことによるのかもしれません。
板目でとられたヴァイオリンやギターなどは、見たことがないのです、たぶんこの振動の問題だとは思うのですが、
どうなのでしょう?
そのあたりの事を追求するのがお好きな方は、是非ご自身で作ってみて試してみてください。
で、私としても、そのことには興味がありましたので、この六歌仙の二胡たちを作る時に、木を見ていて、試してみることにしました。
板目を使うと後から板が反りかえってという事に関しては一工夫してあります。
接ぎ部分の角度を変えるのですが、まあこの話はマニアックになり過ぎなので、省略します。
今回戻ってきて、胴を見ましたが、接ぎ割れなどはなく、大丈夫でした。
板目の胴の二胡を作って感じたのは、音色がとても良いという事です、そして雑味が全くといってよいくらいにないのです。
但し弾きにくい、というか音が鳴り始めるのに、時間がかかります。
3,40分ほど弾いていると、みるみる音が出てくるのですが、それまでにかなり弾き込まないといけないようなのです。
西野二胡の場合、新品にも関わらずすぐ音が出て来ると、言われます。
それが、この「業平」に限って、すぐというわけにはいかなかったのです。
このことは、もしかすると、板目の木で作った楽器の特徴なのかもしれません。
ただ、他の木でも板目で作ったものは、ありませんので、今のところ比べようはないのです。
はたして今回貸出するSIN君は、どう感じるのか、あとで聞いてみたいと思っています。
ホントはこの楽器に似合う人がいらっしゃれば、長く使ってほしいのですが。
これからまた何人かの方に弾いてみてもらおうと思っています。