二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

コンマ1ミリの奈落。その4.

2012-05-15 11:12:35 | ■工房便り 総合 
コンマ1ミリというのは楽器の調整という点では、大きな数字ではありません。

千斤の棹からの幅、駒の高さ、駒の位置、これらは皆、コンマ1ミリを争います。

皆さんがいろいろ千斤を巻き直したり、駒の位置を直したりするのを見ていると、大変荒っぽいのにきずきます。

駒の位置なども、高くしたり低くしたり、結構数ミリ単位で動かしているのを見ます。

もし駒の位置が違うかなと感じた時には、まずコンマ1ミリずつ動かしてみて下さい。

そうっとです。

数ミリ動かしてしまうとちょうど良いところを飛ばしてしまう可能性も有ります。

皆さんも太鼓をたたいた事がおありでしょう、或いは叩いているのを見た事はあると思います。

けっして太鼓の真ん中を叩きませんね。

必ず、真ん中より外側を叩くのです。

弦楽器も普通は真ん中に駒はありません、三線も三味線も胴の下の方ですし、胡弓は上の方です。

二胡もやってみると解りますが、真ん中より少しだけ(2,3ミリ)下の方にすると、駒が弾まなくなります。割としっかりと皮に食いつくのです。

いつのころからか、二胡の駒は真ん中というのが定着したようですが、実験の結果では、真ん中より少し下の方が、安定した鳴りになりますし、雑音も出にくくなります。

やってみて下さい。その時にはコンマ1ミリづつ下げて行って下さい。

千斤もそうですね。

巻き直して、弦の高さを棹に近づけようとする時、或いは離そうとする時、巻き直しますね、

その時には一度軽く巻いて、コンマ1ミリづつ、絞めたりゆるめたりして下さい。

当然、右手では弓を試し弾きしながらです。

左手で千斤を抑えて右手で弓を引き、少しづつ、絞めていくと、空弦での雑音が消える位置があります。

その位置で、もう少し数を巻いて、(はば5ミリくらいになるように)固定して下さい。

よく光舜堂に、私の楽器はこういう設定ですから、というお客様がいらっしゃいます。

そのように決まっているとしたら、光舜堂に来られる意味は無いと思います。

私としては、私のやり方を押しつける気はありません、ご自分の二胡の鳴りに疑問を持たれた方に、いろいろお答えしようと思っています。

ご自分の二胡は良く鳴っていて、良い楽器だと言う方は光舜堂にいらっしゃる意味は無いと思います。

それから、少し話は飛びますが、ご自分の楽器がとても良い物だと思われている方もいらっしゃると思います。特に小葉紫檀(いわゆるコウキ)ですよと言われて購入された方の場合が多いのですが、私が見た1000台に近い数の二胡の中に小葉紫檀は、ありませんでした。
中では棹が本物の小葉紫檀はありました。また大葉紫檀というのはかなりあります。小葉紫檀、レッドサンダー、コウキ、これは今では伐採禁止になっています。私の知っている限り30年ほど前から、密輸以外は中国にも日本にも入っては来ません。もちろん、密輸であろうと陸続きの中国ですから、無い事は無いと思いますが、日本で私はネット上の画像でも見た事はありません。(あくまでも私が見た事が無いと言うだけです)ある中国系の商社が輸入したものは1台見た事があります。値段を聞いたら、中国でさえ8万元と言っていました、日本円にして、104万円になります。そのくらいに高価なものです。今、日本で、コウキ(小葉紫檀)の三味線を購入しようとしたら、多分400万円は下らないはずです。勿論そのくらいのものを購入できる方も沢山おられるとは思いますが、本物かどうか必ず、材木屋さんと一緒に行って確認してください。これは二胡に限らず、バイオリンの世界でも偽のストラデバリウスなどは本物より多いと言われています。楽器の世界の名品というのは兎角偽物が付き物だと言うのは昔から言われていますので、お気をつけて下さい。(もし本物をお持ちの方が居たらごめんなさい、全く無いとは言っていませんから,あしからず、今私も本物で1台作っています。そのうち試し引きに来て下さい)

私は、ブランドより、音色だと思っています、ですから楽器は出会いなのだとも思うのです。

さて、話が飛びました。

光舜堂では健全に鳴らすという方向での、調整です。

音色を無理やり、籠った音や、昔からの二胡の音と思われる方向に、調整して下さいと言う方もおられますが、

どうなのでしょう?

まずは健全に一杯に鳴らす事を、鳴るようにする事を楽器に覚え込ませ、或いは、一杯に鳴らす気持ちの良さを楽器に仕込むようにして、それから、ご自分の右手の訓練ではないかと思います。

よく甘い音色になるようにと言われる方もおられますが、調整で作り上げるのは、なんとかできなくはないのですが、楽器が一杯に鳴ると言うのを止めてしまいやすいのです。

ですから、音の出が悪くついつい自然に力んで弾いてしまい、余計あまい音から遠ざかってしまう方も見かけます。

甘い音は、皆さんの右手から出ます。

これは皆さん経験有るはずなのです。先生方はどんな楽器を弾いてもとても良い音色で鳴らすのですから。

先日、張艶先生がいらした時に、西野さん弾いてみてと言われ、はずかしながら、良宵弾きました。

その時に、先生の言われたのは、「外弦は弾けています。内弦弾く時に、少しホントに少し、右手を身体に近づけて」

やってみました、普段何気なく弾いている右手の位置をホントに少し多分10ミリぐらい身体に近づけました。(弦の上で、コンマ1ミリぐらいでしょう)

とんでもなく良い響きで、甘く鳴ります。(これがいつもできると良いのですが)

右手のホントに1ミリ、コンマ1ミリの動きが、これほど大きく音に影響するとは思ってもみませんでした。

楽器は、全てコンマ1ミリの調整で、とんでもなく鳴るのに気が付いたのは、この時でした。

やってみて下さいコンマ1ミリの手の位置の違い。


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