二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

蛇皮について(再考)

2011-11-21 12:48:35 | ■工房便り 総合 
10月の終わりに、上海に連絡を入れました。

上海の皮やさんに。

「しばらく、蛇皮入らないですよ」

「え!何でですか」

「ベトナムもタイも洪水の影響で、蛇皮出せないのです」

「いつ頃になりますか?」

「多分、乾期になれば、蛇戻ります」

こんなところでも、異常天気が関係あるのかと驚きました。

蛇は泳げますから、泳いで何処かへ行ってしまったのでしょうか。

しばらくは、手持ちの皮でなんとかしなければ、と思いつつ、

ストックを調べてみると、なんとか20枚は確保できそう。

見ていると何でこの皮、残したのだろうと思うようなものもあります。

記録を調べてみると、以前、シャム柿に張った残りです。

あれだけ厚い皮の、次のクラスと思っていたものですが、良く見てみると、いきなり鱗が大きい部分が有ります。

何でと・問い合わせしてみたところ、

「蛇にもそれぞれ個性は有るんだ、そんなことも解らないのか・」

いやいや、解ってはいるのですが、これほどの差は、なかなか想いもつかなかったのです。

ホントに最近思うのは、張ってみなければわからない。

おかげで今回のシャム柿は2回も張り替えてしまいました、、、、

だんだん贅沢になって来て、まあ、これも仕方ないのですね、良いもの以外は出せない。
年を取った証拠かもしれません。

作ったものは残ります。

手を離れた二胡がどうしているのかと気になるのは仕方ないかもです。

これが家具であったら少しは違います。

二胡の場合、変な調整をされると、その癖が、楽器のくせになってしまいます。

バイオリンなんかも、弾いた人によって音が変わるといいます。

特に皮にはかなりのくせが付きます。

千斤や駒で押しつけられますから。

これは仕方ないことではありますが、気にはなります、生みの親より育ての親と言いますから。

以前、ある先生の二胡の皮を張り替えたことが有りました。
(高名な中国人の先生が10年くらい弾いていたものだそうです、譲り受けて何年かしてパタッと音が出なくなったようなのです。)
その二胡の皮をはがして解ったことが有ります。

剥がしてみて驚いたのは、全体にふわっと柔らかいことです、それから、粘りが無いのです、
皮の片側だけを持つと、タラッと下にさがってしまいます。

通常、二胡の皮はがしても、片側を持っても、ピンと平らになっています。
(歪んでしまったものはこの時によくわかります、真っ平らではなくなっていますから)
その力が無くダラット下がってしまうのです。

大体最初からすると、20年ぐらいだそうです。

ああ、こうなるんだと、皮の経年変化というのが良く解った気がします。

こんなことも自分の作った二胡の行くすえ見つめる、親の気持ちかもしれません。

それで最近、家のタロウ君にも皮の張り方を伝授しています。

私が行ってしまったあとまで、楽器は残りますから。

最近、このことがとても気になります。自分の作った物の行く末です。

「売ってしまったものは仕方ないですよ」、とほぉさんにも言われますが、

ジジイになったのでしょう、自分の親の想いが今になって解ったような気がします。

嫁に出した娘が、或いは遠く離れた息子が、また或いは、10年もうちの仕事場で修業した若者が、どうしているのか。

たまには顔見せに来て欲しい。と、

多分親たちは大変気がもめたことでしょう。

女房の母親が良く言っていました。

「育てる間の苦労なんかは苦労の内に入らない、離れてしまって、自分が手を掛けられなくなってからが、ホントの苦労だよ」

だからこそ、今は手かけるだけかけたいのです。

確かに、そんなことが分かるような年になったのだと思います、

あの胡はどうやって育てられているのか?

風のうわさに、一喜一憂する今日この頃です。

爺のくりごとですね、

ご勘弁を。
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