これは、天然に熟成される松脂はどうやってふつうの松脂から変化していくのかの実験です。(以前の記事を編集してあります)
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これは制作の仕方、特に温度の違い、そして熟成による松脂の色の変化です。
擦弦楽器に使われる松脂は、私が知っている限り50種類くらい発売されているようです。
松脂そのものはガムロジンと言われる、木の幹を傷付けて滴り落ちる液体を集めて、それを蒸留して採取されます。
(パルプを作る時に、採取されるものはトールロジンと言われて、松脂としては現在このほうが量がおおいようです)
そのガムロジンを様々な加工で、なるべく擦弦楽器の良い音を引き出そうと各社様々な作り方をしているようですが、詳しい製法というのは発表されていませんね。
一番多く分かりやすいのは、これ!
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これはこれは中国製のガムロジンを湯煎で溶かして固めたものです。
これは二胡の皆さんには大変見慣れたものだと思いますし、ヴァイオリン用などにも似たようなものが発売されています。
この黄色っぽいものは、比較的油分がたくさん残っていまして、引っかかりがとても強い性質をもちます。
それは、油分によってかなりべたつきそのべたつきがあることで弦の引っ掛かりを強くしているのだと考えられます。
粒子がの大きさがバラバラなようで、かなり雑味のある音がしやすいので、それで二胡用に使われているのかもしれません。
製法としては一番簡単ですので、比較的金額は安いですね。
その弦への引っかかりの感じを様々に工夫しようと、そして粒子をなるべく均一にしようと、各社製法をいろいろ考えてます。
かなり長時間この中国製のガムロジンを熱しますとこのような色になります。
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油分が相当減って赤みを帯びてきます。(雄文が少なくなればなるほど赤みが強くなります)その分引っ掛かりが少なくなるので、再度湯煎しながら、ひまし油を入れたり、オリーブオイルを入れたり、中には糖分を入れて引っ掛かりを良くしていることもあります。
糖分を入れたりカーボンを入れたりすると、色そのものがかなり黒くなります。また細かな粒子ですので音としては、かなり微妙なニュアンスを作りやすいです
これらは黒と言っても相当不透明な黒になっています。
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おなじ黒い(ヴァイオリン業界ではこれをダークと呼び、引っ掛かりの強いものとしています、引っ掛かりの弱いものはライトと呼ばれます)
ものでも、相当引っ掛かりの強さが違います。
中には金属粉を混入する所もありますし、コントラバスやチェロなどに良く使われている松脂などは相当柔らかく、夏場には溶けて流れてしまうようなものもあります。
その他、松脂には天然の物というのがあります。これは現在ごく一部でしか使われていません。
中国の京胡という楽器の演奏者はこの天然熟成の松脂を使いますし、いわゆるヴァイオリン系の松脂を作っているところでも、天然に熟成されたものを集めてきて、更にオイルなど入れて引っ掛かりをよくしたものを発売しているところもあります。
ただ製品としてはなかなか同じ安定したものではないとのことですが。
それは、採取するごとに性質が変わってしまうからという事もあります。天然ですから。
最近私が理解し始めたところでは、天然にも大きく分けて二つあるようです。
一つは長い間土の中に埋もれて、徐々に水分も油分も抜けて熟成されてきたもの、
また土質によっても大きく性質が変わりとても引っ掛かりの強いものもできる場合もあります。
そのようにして大地の恵みによって、育てられたものですが、戦前はそのような松脂を、世界中の擦弦楽器奏者が使っていて、その音色の豊かさを実現していたのです。
もう一つは、大地の恵みというより、暴力!要するに山火事などでかなりの高温にさらされた松脂が相当細かな粒子になったものがあります。
粒子が細かいですから、弦を鳴らすととても多くの倍音を引き出します、長年熟成された松脂などに比べると引っ掛かりが、粘りがなく、多少引っかかりの強い松脂とまぜないと、良い響きを維持できないようです。どうやら最近ではこの山火事起源の」松脂も販売されているようです。
その山火事起源でも、ゆっくりと長い間溶けるか溶けないかくらいの熱量で精製されたものは、反対にとても強い引っ掛かりを実現します。
それだけで弾くととても弓が扱いにくくなりますので、生のガムロジンを再度混ぜたりして、加減しているようです。
自然から採取されたときには、ほとんどどれも黒いいろで、使ってみないとその性質が分からないのです
松脂は熱のかかり方によって、その色も変えその性質も変えていきます。
私の作る松脂は、ひたすら、長時間かけて熟成させ、より大地の恵みを再現しようとしています。
何も加えず大地が育てたように作りあげた松脂は、このように透明感を持ちながら真黒になっていきます。
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松脂工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ