最後の⑤~6です。
ここは、高音部を司るところです。
ここの削り方によっては高音部の鳴りが良くもなり悪くもなりますし、
もう一つの役割としては全体の音の重量感と言うのが、決まるようです。
この⑤~⑥は、前の④~⑤の処の厚みと反比例するようなのです。
前の部分が厚いとここは薄くした方がより高音は出易くなります。
この最後の⑥の所に付いている花窓は音に影響が殆ど無いのです。
一つには、花窓をつけている、ボンドの質にもよるかもしれません。
(胴を構成する6枚の板をつけているボンド、ニカワも音には大変な影響が有ります、特にその硬さと粘りですかね)
蘇州型などは、かなり花窓が、細かい透かし彫りになっていますから、蛇皮が振動した音が少しは止まっているのかと言うと、それほどでもありません。
ちなみに、硬いもの(木の板)でここを完全に塞ぐと、音は変わります。
籠った音がします。
当然ですね、後ろから抜けて来る音が無くなり、前からと全体になる音が強調されますが、音としてはかなり籠った感じになります。
二胡の音は、この後ろの部分から聴こえるだけではなく、二胡全体が鳴っていると考えて良いと思います。
皮は前後に振動しますから、当然前にも音が出ているはずです。
この前に出ている音と言うのこそ、蛇皮の振動が中心の音なのですが、当然胴の全体の音も影響しますのでこれだけを拾い出すと言うのは難しいと思います。
蘇州型ですと、良く鳴るものは全体から音が聞こえるようです。
また北京型ですと、後ろから聴こえる音の方が大きく感じるということは言えます。
前にも鳴り、後ろにも鳴っているのが二胡なのですが、棹の鳴りと言うのも、当然無視できません。
棹は長いですから。
何年か弾きこんだ二胡は、耳のそばで音が聞こえてきます。
棹が鳴っているからです。
皆さんが、電子と調弦器を二胡の頭につけて調整すると、針が動きます。
と言うことは棹も鳴っているのです。
良い作りの二胡は、この棹鳴りも音の大きさに影響します。
もっと言うと、皆さんの体も、二胡と一緒に鳴っているのです。
膝の先に二胡を置いて弾いた場合と、ご自分の体に密着させて弾いた時の音を、お友達と比べて下さい。
自分では分かりにくいですが、他の方が聞くとその差ははっきり違います。
皆さんの右手も左手も、お腹も胸も鳴るのです。
楽器は、体で弾けとよく言われます。
それはこの事を言っているのでしょう。
うちの工房のタロ若の義理のお兄さん、馬頭琴奏者のアヨーシ バドエルデネさんは、会ううたんびにもっと体重つけなければと言います、小柄な方ですので、もっとウエイトが必要なんだと言います。
体も楽器の一部なんだと言うことは良く言いますね、
良い楽器は体をも巻き込んで楽器の一部にしますし、良い演奏家は体を上手く使います。
二胡は、その木でできた部分の胴と棹だけではなく、あなた方の体をも使って音楽を奏でるのではないでしょうか。
ある意味良い楽器も悪い楽器もありません。
二胡は弾きこんで弾きこんで、その弾きこみに依って、
気持ちも体も二胡と一体化することで、一つの音色が出来上がり、
それがあなたの感性と更に結びついて、素敵な音楽を作りだすのではないでしょうか。