かなりマニアックな話になります。記録として残していこうと思っています。
これは二胡の胴の一枚の板の断面です。
一番目が、昔からの蘇州系。
二番目が、最近多くなってきた上海系
三番目が、北京系(8角形)
最近では北京系も二番目の上海系に近い形になってきているものも多くあり、工房によって少しずつ違うようです。
二胡の胴の内部の働きとしては、棹の周辺部(左側)
蘇州系は内部の削りが少ないです。
上海系は内部の削りが棹の穴の近くまで来ています。
この棹のあたりを薄くすると、高音がしっかっり出てくるようです。
これらの形状は全て刃物の型で同じように削ります。
同じに削っているにも関わらず、上海系では雑音と音の裏返りというのが各楽器によって違いが出てくるのです。
蘇州系は音色も良く(私が好きなだけかもしれませんが)響きも良いのですが、最近の音を大きくなる楽器という点では少し物足りないような気もします。決して響きが小さいわけではないのですが、手元で聞こえる音の大きさとしては上海系の方が大きく感じます。
そして蘇州系には音の裏返りというのが、私の知っているものに限りますが、音の裏返りというのがほとんどありません。
それは棹の周辺部の高音部の厚みが、しっかりあるからだと思います。
そして、全体の音色としても良いように感じます。
昔の二胡の音色というのはこのあたりから来るのでしょう。
上海系はこの高音部の棹のあたりがかなり薄くなっています。
でも音の裏返りが出ない楽器もあるし出る楽器もあります。
私が見た限り、音の裏返りが出ない楽器というのは、同じ紫檀でも相当密度の高い楽器、胴の木の重さのある楽器ということが言えます。
そして、もう一つは繊維の強い板を使ったものです。
同じ紫檀でも比較的柔らかいもの、あるいは導管のとても多い物は、大きくは鳴るのですが、その分音が裏返りやすいです。
楽器の新しい時には出なかったものがしばらく弾き込んでいくと皮も振動が強く鳴り、音が裏返り始めます。
こういう時には、この高音部の木が薄い、と思ってよいと思います。
直すには、皮を張り替える時に、この薄く削ったところに
薄い板を張るなりして厚みを増やすと音の裏返りは無くなります。そして音色の良さが出てくると感じます。
方法は様々あるのですが、これはまた何時か。
多分、最初にこの形を試した時には相当良き木(密度の高い木)を使って試したのだと思います。ですからここまで薄く作れたのでしょう。
木は一枚一枚その密度と質が違いますから、本来はその木の密度に合わせて削るものだと思うのです。
ヴァイオリンなどは、最近では量産品もかなり良い響きになります。これは機械加工が相当良くなってきているからではありますが、それでも作家が木の質を感じながら削り込んで作ったヴァイオリンにはかなわないのです。
本来楽器というのはそうあるべきとは思いますが、量産体制の現在の二胡ではそうもいかないのでしょう。
ですので、次第に貴重になってくる紫檀や黒檀の楽器大切にする意味でも、何とかその健全な鳴りを取り戻す方法を、今考えています。
次回は良い木だけを使っているはずなのに、に付いてです。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ