ザ・コミュニスト

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諜報国家アメリカ

2013-10-26 | 時評

アメリカ諜報機関が友好国の国家元首らの電話まで盗聴していた前代未聞の疑惑は、「オバマゲート事件」に発展しそうな雲行きであるが、考えてみれば、かの国はかねて軍事大国であると同時に諜報大国でもあるのだから、驚くに値しないのかもしれない。

それにしても、ここまで暴走していたとしたら、そこには近年のアメリカの異変が関わっているかもしれない。その異変とは、アメリカの国際的地位の低下である。アフガン、イラクと相次ぐ二つの地域戦争で軍事的に疲弊するとともに、経済力に陰りが見え、財政危機をめぐる政争も激化するなか、中国など新興国の台頭に押されて、パクス・アメリカーナも過去のことである。

そうした状況下で、オバマ政権は得意の諜報活動を活発化させて地位の低下をカバーしようとしているように見える。ここには、表向き美辞麗句の「名演説」で人を引き付けつつ、裏では不法な工作活動もためらわないオバマの二重人格的な政治性格も影響しているのであろう。

ただ、従来のアメリカ的諜報活動は対外的なものに主眼があり、国内的諜報活動には否定的・抑制的であるのが伝統であったが、オバマ政権下では「テロ対策」を名目に国内でも諜報機関が秘密裡に大規模な個人情報の収集を展開していたことが先に発覚しており、国内的な面でも「諜報国家」の性格を強めつつある。

大きくとらえれば、かねて対外的には非民主的に振る舞うも、国内的には民主主義を―ブルジョワ民主体制の範囲内で―保持してきたアメリカが、国内的にも民主主義を放棄しつつあるということであろう。

より正確に言うならば、民主主義そのものよりも自由主義を放棄しつつあるということになろうが、政治的には古典的な二大政党政でしかないアメリカ式民主主義から自由を取り去れば、後に何が残るのだろうか。

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