安倍首相の訪米・首脳会談を機に、日米安保条約のガイドラインが三度目の改定となった。その目玉は日本の対米軍事協力の地理的制約が撤廃されたこと。これによって、日本自衛隊は地球の果てまで米軍の後をついて駆け巡ることも可能となる。
この安保条約ガイドラインは、もともと全文わずか10か条にとどまる安保条約の具体的な解釈運用の指針を定めたもので、実質上は条約本体に匹敵する重要性を持つ付属法文書である。
よって、本来なら条約本体に準じて国会で審議し、批准承認の対象とすべきものだが、政府は形式論に立ち、ガイドラインを単なる政策文書に過ぎないとして、日米政府間の合意だけで改廃できるという扱いをしてきた。
冷戦後期の1978年に制定されたガイドライン自体が日米安保を日米共同安保―実質は対米従属安保―に転換させる契機となったのではあるが、それでも第一版では憲法9条に配慮し、日本の軍事的役割はまだ謙抑的に規定されていた。
それが冷戦終結後の97年の改定で「周辺事態」の概念が登場し、日本防衛目的を逸脱した自衛隊の出動が可能となった。それからおよそ20年を経ての今般改定では「周辺」の地理的限定も撤廃され、地球全域での「重要影響事態」にまで拡大される。事実上無制限の軍事協力体制である。
※ただし、「重要影響事態」とは、「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」と定義されているので、そのような影響が及ぶのは、日本とも地理的に近いエリアで発生する「事態」におのずと限られるはずである。
ここに至り、憲法9条を超越しながらも辛うじて9条を尊重はしてきた日米安保条約の解釈による全面改訂が成ったことになる。集団的自衛権の解禁が「解釈改憲」なら、地球全域安保は「解釈改安保」と呼び得る大改定である。
このような国民の命運に関わる大改定を国会で審議せず、政府間協議だけで処理するのは、9条のみならず、議会制も放棄するに等しいことである。
今般改定でガイドラインはほぼ20年周期で改定されることがほぼ慣習となったので、次期改定はおおむね2030年代と予測される。そこでは、軍事協力の範囲が地球の果てから宇宙の果てに拡大され、協力内容も戦闘参加にまで及んでいるであろう。