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持続可能的計画経済論(連載第28回)

2018-07-17 | 〆持続可能的計画経済論

第6章 計画経済と労働生活

(4)労働紛争
 共産主義的企業体では労使の対立が止揚されているため、深刻な集団的労働争議は通常想定できないが、個別的には労働者と所属企業体の間で労働条件等をめぐる紛争は発生し得る。そのような場合の対策として、労働者参加を基本とする共産主義的企業体は紛争処理機能をも内在化している必要がある(企業内司法)。
 そうした企業内司法を担う第三者機関が、「労働仲裁委員会」である。これは当該企業と利害関係を持たない外部の法律家で構成される調停機関で、問題を抱える労働者からの相談を受けて紛争調停に当たる。
 そこで出された調停案に不服の労働者は労働基本権の擁護を専門とする司法機関である労働護民監に苦情申立てをすることができる。 
 労働仲裁委員会は、少数人の協同労働グループを除くすべての企業体で常置が義務づけられ、労働紛争は先行的に企業内の労働仲裁委員会での調停を経なければ、労働護民監への申立はできない(仲裁前置主義)。
 こうした個別的な労働紛争を越えた集団的労働争議は、上述したとおり、労働者の経営参加が基本となる共産主義的企業体にあっては想定し難い。中でも資本主義社会では労働争議のほぼすべてを占めていると言ってよい賃金闘争は、賃労働が廃される共産主義社会ではあり得ないことである。
 従って、集団的労働争議についてはそもそも想定外とみなしてよいとも言えるが、仮にそうした事態が発生した場合は、労働者参加機関を通じ、経営責任機関との協議によって解決するのが基本である。前回述べたように、共産主義社会では公式な労働組合の制度は存在しないからである。
 労働者参加機関をもってしても解決できない極限的な対立状況で、有志労働者が組合を結成し、ストライキなどの争議行動に出ることは必ずしも禁止されない。かといって資本主義社会のように「争議権」が正面から認められるわけではないので、争議行動を理由とする解雇もあり得るが、そうした処分の当否も労働護民監の個別的な判断に委ねられることになろう。

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