五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏
(11)ベネルクス
(ア)成立経緯
主権国家のベルギー、ネザーランド(オランダ)、ルクセンブルクの三国が合併して成立する連合領域圏。三国は従来から強い同盟関係を形成してきたが、これをさらに発展させ、一つの連合にまとめるものである。ただし、三国の単純な合併ではなく、旧オランダの州が各々自治権を持つ準領域圏となり、旧ベルギー領域はフランデレン地域(オランダ語使用地域)とワロン地域(フランス語使用地域)、ブリュッセル大都市圏が準領域圏として分立され、ルクセンブルクはそのまま準領域圏に移行する。なお、旧オランダの海外領土はすべて分立する。
(イ)社会経済状況
主権国家時代から、三国は高い生活水準と先進的な社会政策を共有してきたが、こうした蓄積は共産主義体制の連合形成後も継承される。ただし、小国ゆえに金融立国だったルクセンブルクは貨幣経済の廃止に伴い、主要産業を失うこととなるが、連合を構成する準領域圏として、計画経済により維持される。
(ウ)政治制度
連合民衆会議は、各準領域圏から人口規模で比例した定数抽選された代議員で構成される。連合の政治代表都市は、ハーグに置かれる。多言語のため、連合全体の公用語はエスペラント語。
(エ)特記
連合形成前のベネルクス三国は、いずれも立憲君主制(ルクセンブルクは君主制に準じた大公制)を採用してきたが、連合形成を機に君主制は廃止される。ただし、いずれの王室・公室も一般公民化されたうえ、称号のみの存在として残される。
☆別の可能性
三国が完全に連合せず、各単立の領域圏としてベネルクス合同領域圏を形成する可能性もある。また、旧ベルギーでは、フランデレンとワロン両地域内の各州が準領域圏として再編される可能性もある。
(12)ジャーマニー
(ア)成立経緯
主権国家ジャーマニー(ドイツ)を継承する連合領域圏。旧連邦を構成する各州及び都市州(州相当の大都市)が、連合を構成する準領域圏にそのまま移行する。
(イ)社会経済状況
ドイツでは革命前から環境政党・緑の党が強かったこと、東西ドイツ分断時代の旧東ドイツでは計画経済が実施されていた歴史があることなどから、持続可能的計画経済への移行が最もスムーズに運ぶモデル領域圏となる。旧欧州連合内最大の経済大国であった時代を継承し、計画経済下でも汎ヨーロッパ‐シベリア域圏を代表する存在である。20世紀末の東西ドイツ統一以来の懸案であった東西経済格差は、計画経済の導入により解消される。
(ウ)政治制度
連合民衆会議は、各準領域圏から人口規模に比例した定数抽選された代議員で構成される。
(エ)特記
資本主義時代から環境技術で屈指の存在であったジャーマニーには、世界共同体の環境技術開発機構が置かれる。
☆別の可能性
なし。