序
世界共同体(世共)は、現在世界の主権国家の連合体として機能している国際連合(国連)に代えて、主権国家体制によらない世界諸民族の共産主義的な統合体として筆者が年来提唱している未来的な枠組みである。
世界共同体自体は国家ではないが―従って、いわゆる「世界連邦」論とは全く異なる―、地球全域を包摂する単一の統治機構として、基本法を擁する。これが「世界共同体憲章」である。世界共同体憲章は、国際連合憲章に相当するような基本法であると言える。
しかし、あくまでも国連の設立根拠と組織編制を定めた条約法にとどまる国連憲章とは異なり、世共憲章は、世界共同体を構成する各領域圏の憲法に相当する領域圏憲章の統一的な法源を成すものであり、構成領域圏は世共憲章に反する領域圏憲章を制定することはできない。そのような強い規範的拘束力を持つことが、世共憲章の性質である。
もっとも、世共憲章も世界共同体の設立根拠法にして、その組織編制を定めた組織法としての性質も有するが、それに加えて、基本的人権に関する諸規定を包含する点も、現行国連憲章との相違点である。その点、現行国連憲章は基本的人権に関する規定を包含せず、規範性の弱い世界人権宣言と二本の国際人権規約が国連憲章とは別立てで散在していることに脆弱さが見られる。
これに対して、世共憲章はその中に直接に基本的人権条項を包含し、従ってそれが各構成領域圏の憲章を拘束するという形で、基本的人権の民際的な保障が確保されることとなる。そのため、各領域圏民は、基本的人権を侵害された場合、世界共同体の人権査察機関に対して直接に救済を求めることも可能となるのである。
このように、国連憲章と世共憲章には重要な相違点もあるが、世界共同体自体、国際連合を否定するのではなく、国際連合の歴史的な意義を踏まえつつ、その限界性を脱構築的に克服して創出されるものであるからして、世共憲章も国連憲章の構成や内容を吸収・継受したものとなるであろう。
本連載では、世界共同体憲章を概説するにとどめず、逐条的に試案を示す形で提示するが、もとより私案としての試案であるので、最終的には、世界共同体の創出主体となる世界民衆会議内部の集団的討議を経て正式な草案が策定されることを予定している。
以下、憲章の全体構成を目次的に示すが、具体的な章立てや章の表題は、行論中の再考の結果、修正または変更される場合があり得ることを予めお断りしておきたい。※再考・修正の結果、現在、条文番号にずれが生じているため、補正中です。
前文 ページ1
第1章 目的 ページ2
第2章 世界共同体の構制
第3章 原則及び構成領域圏等の地位 ページ3
第4章 機関 ページ4
第5章 総会 ページ5 ページ6
第6章 汎域圏全権代表者会議 ページ7
第7章 持続可能性理事会 ページ8 ページ9
第8章 世界経済計画 ページ10 ページ11
第8章a 持続可能なエネルギー開発 ページ11a
第9章 天然資源の民際管理 ページ12 ページ13
第10章 恒久平和 ページ14
第11章 平和理事会 ページ15 ページ16
第12章 紛争の平和的解決 ページ17 ページ18
第13章 平和維持及び航空宇宙警戒 ページ19 ページ20
第14章 基本的人権 ページ21 ページ22 ページ23 ページ24 ページ25
第15章 人権査察院 ページ26
第16章 特別人道法廷 ページ27
第17章 民際捜査機関 ページ28
第18章 社会文化理事会 ページ29 ページ30
第19章 憲章理事会 ページ31
第20章 地球環境観測 ページ32
第21章 宇宙探査 ページ33
第22章 信託代行統治 ページ34
第23章 独立宗教自治圏域 ページ35
第24章 事務局及び人事評議会 ページ36
第25章 独立調査及び弾劾 ページ37
第26章 雑則 ページ38
第27章 世界公用語に関する経過規定
第28章 世界共同体暦
第29章 改正 ページ39
第30章 署名及び批准