( 秋海棠 )
秋海棠西瓜の色に咲きにけり 松尾芭蕉
病める手の爪美しや秋海棠 杉田久女
女去つて秋海棠の茎紅し 澤木欣一
秋海棠まだ降りたらぬ空の色 中野千代
伊吹嶺 8月号より
メーデーの列動きだす土埃 宇佐美こころ
( 野紺菊 )
今日8月19日、は・い・くの日だそうです。今朝の読売新聞「編集手帳」にこんな記述
がありました。
「ドイツのソプラノ歌手エリカ・ケートさんは言語の響きや匂いに敏感であったらしい。
歓談の折に語った比喩論を浅利慶太(劇団四季)が自書に書き留めている。
イタリヤ語を歌に向く言葉、フランス語は愛を語る言葉,ドイツ語を詩を作る言葉と評した。・・・・・・後略」この後に甲子園の高校野球での勝利インタビューで花巻東
の菊地雄星投手が「これまでも練習試合で対戦し、ずっと横浜隼人高校のようなチームになりたかった。今日勝てて少し近づけたかなと思う」17歳の夏の言葉です。
相手を思いやる心と素直な感性にとても感動しました。
テレビでは衆議院選挙の第一声を眉間に深い皺を寄せて訴えている各党党首の
顔が映し出されています。この人たちの言葉はメッセージではなく、アナウンスに
聞こえてならないのは私だけでしょうか。
俳句を通じて詩を楽しむばかりでなく、人との出会いに感動することも大いに俳句の
周りを楽しむことになるのでしょう。
瞳を澄ますほどの風あり野紺菊 きくちつねこ
野紺菊日ざし逃さぬ髪束ね 花谷和子
山のいろ山より湧きぬ野紺菊 手塚美佐
色褪せてむしろ魅かるる野紺菊 米尾 芳子
伊吹嶺 8月号より
壬生狂言奈落に紙の蜘蛛の糸 石川紀子
( 灸花・屁糞蔓 )
灸花こころひとつが昏れゐたる 河原枇杷男
降りぐせの山の宿なり灸花 星野麦丘人
またひとつ薬のふへて灸花 西島美代子
灸花頭隠して尻隠さず 高澤良一
伊吹嶺 8月号より
花苺囲つて鶏の放し飼ひ 野々垣理麻
( 金水引 )
今日は魂送りの日,浅草の浅草寺近くの親水テラスでも流燈会が行われます。
ゆふぐれの金水引の一條も 佐々木六戈
水引のきんいろ挿して山の家 関戸靖子
行水や水引の花蓼の花 田中冬二
伊吹嶺 8月号より
微笑みの円空仏も梅雨に入る 村井まさを
( 綿の花 )
今日8月15日は64回目の終戦記念日それはすなわち敗戦忌でもあります。
今年上梓された伊吹嶺主宰栗田やすしの第4句集「海光」の中より(敗戦忌)の項の
中からころころが感銘を受けた珠玉の数句をご紹介します。
唯一米軍の上陸の侵攻を受け、多くの一般の犠牲者が出た沖縄で詠んでいます。
蜥蜴這ふ砲火に焦げし洞窟(ガマ)の口
暗闇に滴りの音自決壕
語り部となりし老爺に蝉時雨
慰霊の日礎(いしじ)にすがり婆泣ける
骨いまだ残るてふ洞窟(ガマ)滴れり
靖国の靖はわが名敗戦忌
栗田やすし 句集「海光」 より 敗戦忌
( 南蛮煙管・なんばんぎせる )
植物園に写真の南蛮煙管が咲きだしました。少し湿り気のある草むらに咲くので
見過ごしてしまう人が多いのですが、通いなれた庭ですから毎年この時を見逃す
ことはありません。3cmほどの小さな花で群がって咲くことはないようです。
一年生の寄生植物でこの花は薄の根に咲いていました。
8月の終わり頃には,沢桔梗、段菊が咲いていよいよ秋の庭に移って行きます。
跼み見るものに南蛮煙管かな 山崎ひさを
一触即発南蛮煙管咲きました 栗林千津
のどを焼く酒や残暑の港街 有馬朗人
豆腐屋のらつぱに走る残暑かな 後藤 淑子
伊吹嶺 8月号より
青嵐癌病棟の窓を撃つ 古賀一弘
( 赤とんぼ )
今日は月遅れの盆の入りですね。東京では7月13日が入り、旧暦では9月1日
その土地土地によって農事の行事は行われるようです。
ころころの実家も昔から月遅れできています。
盆用意女で混める製米所 沢木欣一
木も草も崖に根を垂れ盆の入 蝦名石蔵
秋あかね古墳の空にとどまれり 清水弓月
秋あかね海女の笛聞く崖の上 大川鶴園
から松は淋しき木なり赤蜻蛉 河東碧梧桐
伊吹嶺 8月号より
朴葉味噌焦ぐるにほひや夏の宿 三井あきを
( 玉あじさい )
ツボミのときに丸い球のようになっているのでこのように名づけられました。完全に
開ききると額紫陽花ににています。毎年この季節に花をさかせます。
葉は肉厚でうぶ毛で覆われて、あの艶やかな紫陽花の葉とはかなり違います
うすうすと玉紫陽花の色をなし 行方克己
昨日は結社の句会の日、仕事の都合で欠席投句をしました。
先日仲間と行った赤塚植物園の吟行句を出しました。わずか2時間ばかりの吟行
でしたが,心の体調が良かったのか26句を拾い、9句を捨て、現在推敲中です。
そのうちにここに紹介する予定です。
伊吹嶺 8月号より
半鐘の高さに飛騨の鯉のぼり 佐藤とみお