踊る小児科医のblog

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タバコによる社会の経済的損失

2010年03月19日 | 禁煙・防煙
 タバコ税増税に対して喫煙者から「これまでもタバコ税で国や地方に貢献してきた」という反発があり、政治や行政に関わる方から、貴重な税収のため厳しく規制することへの疑問の声も聞こえてきますが、この点がタバコに関する最大の誤解だと言うことができます。

 医療経済研究機構の試算によると、1999年の時点でタバコ税収が2.3兆円だったのに対し、喫煙による超過医療費と死亡や病気による労働力損失を合計して7.2兆円も損失しており、年間5兆円近く社会に負担をかけていたことになります。この数値は試算方法によって異なってきますが、いずれにせよ税収をはるかに上回る経済的損失を生じていることは間違いありません。



 しかも、これは単純にお金に換算して比較しただけであり、タバコで亡くなった方の命の重みや家族の悲しみは含まれていません。

 日本で初めて屋外タバコ自動販売機を撤去する条例を制定した深浦町の故・平沢敬義町長は、「お金よりも町民の健康の方が大事、長い目で見れば町民のためになる」と訴えて健康長寿のまちづくりを推進しました。それまでヘビースモーカーだった平沢氏は自ら率先して禁煙しましたが、肺がんの病魔に打ち勝つことはできず57歳で亡くなりました。

 お金よりも命が大事。こんな当たり前のことが全く逆になっていたのがタバコ問題の本質であり、突き崩せない壁だったのです。

 タバコ税大幅増税はこの問題を一気に解決に向かわせる切り札と言えます。1)喫煙率激減とタバコによる死亡者減少、2)医療費減少、3)税収増加、4)タバコ税の逆進性(低所得者ほど多額の税金を納めていること)の解消、5)未成年の喫煙がほぼ不可能になるという「一石五鳥」の効果が期待できます。1箱千円になれば、よほどの大富豪の子でないかぎり未成年は買えなくなります。