#私たちが鎌田さんや山本さんと歩いて、あらためて3.11フクシマの惨事を繰り返さないために原発・核燃のない日本を誓ったあの日に、東奥日報は一旦は宣言した脱原発路線を撤回し、「原発再稼働・核燃サイクル堅持」への転向を高々と宣言したのがこの「特別評論」だ。社説にする勇気もなく、報道部長のただの署名記事に過ぎないものを、あの鎮魂の日にひっそりと忍び込ませた愚劣さ。
震災1年 特別評論/脱原発の近未来/本社報道部長 福井透/産業創出し自立県に(東奥日報 2012年3月11日)
巨大な地震と津波が、原発の安全性に対する国民の認識の甘さを根底から揺るがした。あれから1年。日本のエネルギー政策は大きく方向転換を迫られている。原子力政策に協力、共存を図ってきた本県にとっても、将来の産業構造をどのように築いていくのか、慎重に方向を見定めていく必要がある。
大震災は、原発事故を誘発し、結果、電力は無尽蔵ではないという現実を知らしめた。全国に54基あった原発は順次定期検査に入っており、4月下旬には全ての原発が停止する。国内の電力供給の約3割を担ってきた原発がこのまま1基も再稼働しなかった場合、果たして今夏の需要ピークを乗り切れるのか。
仮に液化天然ガスなどを緊急輸入し続け火力発電を稼働したとしても、輸入相手国の政策に左右される化石燃料を安定供給とは言い難い。地球温暖化にも逆行する。
何よりも、日本が自前でエネルギーを安定供給するために進めてきた核燃サイクル政策そのものを白紙に戻すことになる。その場合、六ケ所村の再処理工場や全国の原発にたまっている使用済み核燃料は一体どうするのか。ガラス固化にしろ直接埋設にしろ処分地が定まらない現状で、核燃サイクルの技術やコストの選択肢が議論されているが、本県が最終処分場にならないことは国との確約事項である。
直ちに原発をゼロにするという議論は、こうした現実を全く見ていないと言わざるを得ない。
国内のエネルギー供給体制は深刻である。企業の生産性が低下すれば景気は一気に冷え込む。その影響は産業基盤が弱い地方ほど大きく表れる。雇用が失われ、少子高齢化が進む一方で、医療や福祉などの住民サービスは低下する。税収が落ち込み自治体運営はさらに厳しさを増す。
政府は原発の原則「40年運転制限」を打ち出した。順次廃炉にする方針とも言え、「脱原発依存」を達成するまでの数十年後へのカウントダウンとも言える。安全性の確認の下に再稼働できる原発を耐用年数まで使用し、その間に、再生可能エネルギーの発電効率を高める研究を進め、将来の電力需要を見越して化石燃料とのベストミックスを図る?。原子力委員会が夏以降に決定する新原子力政策大綱の最も現実的な方向性だろう。
本県には定期検査入り後に停止した東北電力東通原発1号機、工事や試験が中断している東京電力東通1号機、電源開発大間原発、使用済み燃料の再処理工場や中間貯蔵施設が立地する。
これらの施設や計画によって国や事業者から本県にもたらされてきた交付金や補助金、寄付金、核燃税、固定資産税などの経済効果は莫大(ばくだい)だ。さらには雇用や関連産業への寄与も大きい。
原子力政策の方針転換によって、これらの施設の方針が変われば、原子力と共存共栄を貫いてきた本県の産業や自治体の行財政運営が大きく揺らぐ。数十年後の原発のない社会をにらみ、原子力に頼らなくていい産業構造をどう築くのか。国の食料基地の一翼を担う優位性だけでなく、自立でき活力ある産業をいかに創出するか。官民挙げて全力で取り組み始める元年にしなければならない。
(このentryは記事に対する批評を追加する予定です)
震災1年 特別評論/脱原発の近未来/本社報道部長 福井透/産業創出し自立県に(東奥日報 2012年3月11日)
巨大な地震と津波が、原発の安全性に対する国民の認識の甘さを根底から揺るがした。あれから1年。日本のエネルギー政策は大きく方向転換を迫られている。原子力政策に協力、共存を図ってきた本県にとっても、将来の産業構造をどのように築いていくのか、慎重に方向を見定めていく必要がある。
大震災は、原発事故を誘発し、結果、電力は無尽蔵ではないという現実を知らしめた。全国に54基あった原発は順次定期検査に入っており、4月下旬には全ての原発が停止する。国内の電力供給の約3割を担ってきた原発がこのまま1基も再稼働しなかった場合、果たして今夏の需要ピークを乗り切れるのか。
仮に液化天然ガスなどを緊急輸入し続け火力発電を稼働したとしても、輸入相手国の政策に左右される化石燃料を安定供給とは言い難い。地球温暖化にも逆行する。
何よりも、日本が自前でエネルギーを安定供給するために進めてきた核燃サイクル政策そのものを白紙に戻すことになる。その場合、六ケ所村の再処理工場や全国の原発にたまっている使用済み核燃料は一体どうするのか。ガラス固化にしろ直接埋設にしろ処分地が定まらない現状で、核燃サイクルの技術やコストの選択肢が議論されているが、本県が最終処分場にならないことは国との確約事項である。
直ちに原発をゼロにするという議論は、こうした現実を全く見ていないと言わざるを得ない。
国内のエネルギー供給体制は深刻である。企業の生産性が低下すれば景気は一気に冷え込む。その影響は産業基盤が弱い地方ほど大きく表れる。雇用が失われ、少子高齢化が進む一方で、医療や福祉などの住民サービスは低下する。税収が落ち込み自治体運営はさらに厳しさを増す。
政府は原発の原則「40年運転制限」を打ち出した。順次廃炉にする方針とも言え、「脱原発依存」を達成するまでの数十年後へのカウントダウンとも言える。安全性の確認の下に再稼働できる原発を耐用年数まで使用し、その間に、再生可能エネルギーの発電効率を高める研究を進め、将来の電力需要を見越して化石燃料とのベストミックスを図る?。原子力委員会が夏以降に決定する新原子力政策大綱の最も現実的な方向性だろう。
本県には定期検査入り後に停止した東北電力東通原発1号機、工事や試験が中断している東京電力東通1号機、電源開発大間原発、使用済み燃料の再処理工場や中間貯蔵施設が立地する。
これらの施設や計画によって国や事業者から本県にもたらされてきた交付金や補助金、寄付金、核燃税、固定資産税などの経済効果は莫大(ばくだい)だ。さらには雇用や関連産業への寄与も大きい。
原子力政策の方針転換によって、これらの施設の方針が変われば、原子力と共存共栄を貫いてきた本県の産業や自治体の行財政運営が大きく揺らぐ。数十年後の原発のない社会をにらみ、原子力に頼らなくていい産業構造をどう築くのか。国の食料基地の一翼を担う優位性だけでなく、自立でき活力ある産業をいかに創出するか。官民挙げて全力で取り組み始める元年にしなければならない。
(このentryは記事に対する批評を追加する予定です)