これまで、地域差や市町村別の有病率・発症率の差を論ずるのは時期尚早と考えてきたが、県民調査の委員会では「地域差なし」、津田論文では「地域差あり」と断定的に書かれているので、この段階で検討してみることにした。
ポイントは、両論にあるような大きな括りで分けずに、統計的な正確さよりも、定性的な傾向を眺めながら考えられるようにすること。
相当数の母集団があって比較可能と考えられる市部(13市)と、浜通りの町村+川俣村(合計受診者数では須賀川より多く3市に次ぐ)、その他の町村の3つに分けて検討してみることにした。
恣意的ではないかと批判されるかもしれないが、「恣意的」ではなく「意識的」に振り分ける作業がこの段階では必要ではないかと考えて、あえてこうしてみた。(これも一つの仮説)
本論の前に、このような小さな頻度の比較の際に、県民調査の資料にあるようなパーセント%(百分の一)という大きな単位で表記することは、事態を過小評価するためのまやかしと言わざるを得ない。
有病率や罹患率(ここでは発症率と表記)などで標準的に使われる千人あたり、あるいは十万人あたりを採用すべきで、ここでは十万人あたり(パーセントの千分の1)で統一する。
0.10%=100人/10万人あたり この2つは同じ数字
「99.90%はがんではない」と言われれば、ほとんど心配ないようなイメージに受け取られかねないが、「子ども10万人あたり100人ががんになった」と表現すると、全く違った印象を受けるはず。
全体の比較は以下の通り。
■ 先行調査(2011-2013)
浜通り町村+川俣村 45.9人/10万人あたり(以下同じ)
市部平均 38.5
=県平均 37.3=
その他の町村 27.7
■ 本格調査(2014-2015)
浜通り町村+川俣村 24.9
市部平均 24.2
=県平均 21.6=
その他の町村 5.8
先行調査の「平均37.3人」と本格調査の「平均21.6人」の意味合いについては一つ前のentryに記載したように、先行調査ではスクリーニング効果10倍として1/10(=3.7人)、本格調査では受診間隔2.5年として1/2.5(=8.6人)を推定年間発症率と考えている。この数字は本格調査では14.4人まで増える見込みである。
「本格調査では先行調査より減った」のではなく、2~3倍程度の増加と推測されている。
以下、先行・本格調査について列記します(詳細は表を参照)。
先行調査・本格調査とも、浜通り町村>市部>全県>その他の町村となっている。特に、本格調査ではその他の町村と浜通り・市部との差が大きくなっている。
(2015年度の検診進捗状況により縮まるものと思われるが)
先行調査で県平均より高い市は、本宮・二本松・白河・いわき・田村・郡山・会津若松の7市。浜通り町村は7位の会津若松と同じ。
本格調査で県平均より高い市は、伊達・本宮・南相馬・田村・郡山・相馬の6市。浜通り町村は6位の郡山と7位の相馬の間。
伊達・本宮は県平均より約3倍高く、南相馬・田村は約2倍高く出ている。
特に本宮市が先行・本格とも1位・2位にランクインしてることと、本格調査で伊達市が他を引き離して断トツで多くなっていることには注意が必要であると思われる。
これだけだと眺めて考えるには視覚的材料が不足してるので、地図に落として考えてみたい。(明日以降)
(追記)市町村別マップは次のページに掲載しましたので、併せてご覧ください。
↓
福島県:甲状腺がん:市町村別マップ:本格調査で地域差を示唆(201602) 2016年02月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/ad7054c9962a2adf425dd3dc7ee11bab
----------------------------------------------------------
■ 先行調査(2011-2013) 201508確定
◎ 市部
本宮市 57.3
二本松市 56.5
白河市 55.5
いわき市 48.6
田村市 47.4
郡山市 46.2
会津若松市 45.9
=県平均 37.3=
須賀川市 33.1
福島市 25.4
伊達市 18.9
南相馬市 18.5
相馬市 0.0
喜多方市 0.0
----------------------
市部平均 38.5
◎ 浜通り(町村)+川俣村
川内村 357.1
川俣町 90.0
浪江町 61.6
大熊町 50.7
富岡町 43.4
=県平均 37.3=
飯舘村 0.0
新地町 0.0
広野町 0.0
楢葉町 0.0
双葉町 0.0
葛尾村 0.0
----------------------
浜通平均 45.9
◎ その他の町村 27.7
◎ 全県平均 37.3
----------------------------------------------------------
■ 本格調査(2014-2015) 201602発表
◎ 市部
伊達市 77.4
本宮市 62.9
南相馬市 46.1
田村市 40.6
郡山市 32.6
相馬市 22.3
=県平均 21.6=
福島市 18.9
会津若松市 18.7
二本松市 12.8
白河市 10.4
須賀川市 9.1
いわき市 6.1
喜多方市 0.0
----------------------
市部平均 24.2
◎ 浜通り(町村)+川俣村
浪江町 82.6
大熊町 60.5
=県平均 21.6=
川俣町 0.0
飯舘村 0.0
新地町 0.0
広野町 0.0
楢葉町 0.0
富岡町 0.0
川内村 0.0
双葉町 0.0
葛尾村 0.0
----------------------
浜通平均 24.9
◎ その他の町村 5.8
◎ 全県平均 21.6
一次受診者数と患者数の実数を含む表は、以下に画像として掲載。
ポイントは、両論にあるような大きな括りで分けずに、統計的な正確さよりも、定性的な傾向を眺めながら考えられるようにすること。
相当数の母集団があって比較可能と考えられる市部(13市)と、浜通りの町村+川俣村(合計受診者数では須賀川より多く3市に次ぐ)、その他の町村の3つに分けて検討してみることにした。
恣意的ではないかと批判されるかもしれないが、「恣意的」ではなく「意識的」に振り分ける作業がこの段階では必要ではないかと考えて、あえてこうしてみた。(これも一つの仮説)
本論の前に、このような小さな頻度の比較の際に、県民調査の資料にあるようなパーセント%(百分の一)という大きな単位で表記することは、事態を過小評価するためのまやかしと言わざるを得ない。
有病率や罹患率(ここでは発症率と表記)などで標準的に使われる千人あたり、あるいは十万人あたりを採用すべきで、ここでは十万人あたり(パーセントの千分の1)で統一する。
0.10%=100人/10万人あたり この2つは同じ数字
「99.90%はがんではない」と言われれば、ほとんど心配ないようなイメージに受け取られかねないが、「子ども10万人あたり100人ががんになった」と表現すると、全く違った印象を受けるはず。
全体の比較は以下の通り。
■ 先行調査(2011-2013)
浜通り町村+川俣村 45.9人/10万人あたり(以下同じ)
市部平均 38.5
=県平均 37.3=
その他の町村 27.7
■ 本格調査(2014-2015)
浜通り町村+川俣村 24.9
市部平均 24.2
=県平均 21.6=
その他の町村 5.8
先行調査の「平均37.3人」と本格調査の「平均21.6人」の意味合いについては一つ前のentryに記載したように、先行調査ではスクリーニング効果10倍として1/10(=3.7人)、本格調査では受診間隔2.5年として1/2.5(=8.6人)を推定年間発症率と考えている。この数字は本格調査では14.4人まで増える見込みである。
「本格調査では先行調査より減った」のではなく、2~3倍程度の増加と推測されている。
以下、先行・本格調査について列記します(詳細は表を参照)。
先行調査・本格調査とも、浜通り町村>市部>全県>その他の町村となっている。特に、本格調査ではその他の町村と浜通り・市部との差が大きくなっている。
(2015年度の検診進捗状況により縮まるものと思われるが)
先行調査で県平均より高い市は、本宮・二本松・白河・いわき・田村・郡山・会津若松の7市。浜通り町村は7位の会津若松と同じ。
本格調査で県平均より高い市は、伊達・本宮・南相馬・田村・郡山・相馬の6市。浜通り町村は6位の郡山と7位の相馬の間。
伊達・本宮は県平均より約3倍高く、南相馬・田村は約2倍高く出ている。
特に本宮市が先行・本格とも1位・2位にランクインしてることと、本格調査で伊達市が他を引き離して断トツで多くなっていることには注意が必要であると思われる。
これだけだと眺めて考えるには視覚的材料が不足してるので、地図に落として考えてみたい。(明日以降)
(追記)市町村別マップは次のページに掲載しましたので、併せてご覧ください。
↓
福島県:甲状腺がん:市町村別マップ:本格調査で地域差を示唆(201602) 2016年02月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/ad7054c9962a2adf425dd3dc7ee11bab
----------------------------------------------------------
■ 先行調査(2011-2013) 201508確定
◎ 市部
本宮市 57.3
二本松市 56.5
白河市 55.5
いわき市 48.6
田村市 47.4
郡山市 46.2
会津若松市 45.9
=県平均 37.3=
須賀川市 33.1
福島市 25.4
伊達市 18.9
南相馬市 18.5
相馬市 0.0
喜多方市 0.0
----------------------
市部平均 38.5
◎ 浜通り(町村)+川俣村
川内村 357.1
川俣町 90.0
浪江町 61.6
大熊町 50.7
富岡町 43.4
=県平均 37.3=
飯舘村 0.0
新地町 0.0
広野町 0.0
楢葉町 0.0
双葉町 0.0
葛尾村 0.0
----------------------
浜通平均 45.9
◎ その他の町村 27.7
◎ 全県平均 37.3
----------------------------------------------------------
■ 本格調査(2014-2015) 201602発表
◎ 市部
伊達市 77.4
本宮市 62.9
南相馬市 46.1
田村市 40.6
郡山市 32.6
相馬市 22.3
=県平均 21.6=
福島市 18.9
会津若松市 18.7
二本松市 12.8
白河市 10.4
須賀川市 9.1
いわき市 6.1
喜多方市 0.0
----------------------
市部平均 24.2
◎ 浜通り(町村)+川俣村
浪江町 82.6
大熊町 60.5
=県平均 21.6=
川俣町 0.0
飯舘村 0.0
新地町 0.0
広野町 0.0
楢葉町 0.0
富岡町 0.0
川内村 0.0
双葉町 0.0
葛尾村 0.0
----------------------
浜通平均 24.9
◎ その他の町村 5.8
◎ 全県平均 21.6
一次受診者数と患者数の実数を含む表は、以下に画像として掲載。