ニセ科学とその周辺については、EM菌とニセ科学の間(2007年03月10日)に書きかけたのですが、中身がないままでした。その後も、使えば使うほど増える電子マネー(!)だとか、ダルビッシュの「犬の首輪」2本(^^;)だとか、ああいうのを見ると日本の科学教育(数学じゃなくて算数・理科)やメディアリテラシー教育は、基本的なところで失敗しているんじゃないかと思えてきますね。
メールで様々なご質問をいただくことがありますが、通院中の患者さんなどの場合を除いてお返事は失礼させていただいております。ただし、今回ある方からいただいた質問は、簡単な練習問題として面白いかと思ったので、大意を抜粋してここに掲載させていただきます。最初にお断りしておきますが「打ち身に砂糖水」がニセ科学だと追及しているわけではありません。あくまでニセ科学とその周辺を考える題材としてとりあげてみただけです。
<質問>
「私の働いている職場では打ち身などに砂糖水をつけるのですが本当に効果があるのでしょうか。主任は効果があると言ってつけるのですが、自分が体験したことがないので信じられないし、他の人に聞かれても自信を持って答えられません。医学的な根拠はあるのでしょうか? S市 M」
<答>
医学的な根拠はありません。
砂糖水に効果がある可能性を全て否定する(あるいは逆に有害であると断定する)根拠もありませんが、もし効果があるとしても客観的にその差を証明できる程とは思えません。
打ち身のときには「冷却」すべきだと思います。
<解説>
ここでは砂糖水をつけると打ち身に効くかどうか、その真偽については触れないでおきます。
もし砂糖水に効果があるのであれば、それをどうやって証明すればいいのか考えてみましょう。
・砂糖水に効果があるのなら、その有効成分は砂糖(主にショ糖)と考えられるので、砂糖の抗炎症作用が、動物実験など様々な方法で確かめられること。
・種々の濃度の砂糖水を皮膚に塗ると、有効な濃度で皮膚から皮下組織、あるいは筋肉へ吸収されることが確かめられること。
・実際に臨床的に打ち身に対する効果を確かめるためには、比較対照試験が必要です。
1)「何もしない」グループと比較する
2)プラセボ(偽薬)コントロールと比較する
3)一般的に行われている治療(冷却や消炎鎮痛剤の塗布など)と比較する
1)は新薬の治験のようなボランティア(アルバイト)でないと、実際に症状のある人に「何もしない」ことを選択することは倫理的には困難。
2)は良く知られた例で、高名なお医者さんに「よく効く薬だよ」と言って処方されれば、小麦粉を固めただけの「クスリ」であっても一定の割合で改善効果が認められる(病も気から)ので、プラセボ(偽薬)よりも効くということが確かめられなければ、薬の効果ではなくプラセボ効果しかないということになります。
より厳密に行うためには、処方する医師が本物の薬か偽薬かを知っていると、無意識のうちに言動にあらわれ患者さんに対する効果に影響することが知られているため、医師も患者も知らない「二重盲検法」という方法が用いられます。
例えば、保育士さんもどちらかわからないように砂糖水と食塩水を用意しておいて、その結果を時間と共に観察し比較するというわけです。
3)は更に、砂糖水が冷却や消炎鎮痛剤と同等または優れた治療であることを証明する方法です。
いずれも、両群で統計学的な差を証明するためには、相当数のケースが必要になります。
また、砂糖水では問題になりませんが、新薬や民間療法などでは当然副作用の問題が出てきますが、ここでは省略します。
砂糖水の効果は、以上のような手法では全く確かめられていないし、これからも実証される見込みはありませんから(そんなことしても時間とお金と手間がかかるだけで誰の得にもならない)、今後も「不明」のまま「驚異の民間療法(下記サイト参照)」として言い伝えられていくのでしょう。
ではなぜ効くとされているのか。言い伝えられているのか。
ここでは「効果があることは証明されていない」と書きましたが、これはもちろん「効果が否定された」と同義ではありません。
ですから、本当に効果があるのに単に科学的に証明されていないだけ、というのが一つの可能性。
ところが、ネットで検索してみるとみつかるのは次のようなページばかりです。
<ネット上で検索された記載例>
>Q.打ち身や擦り傷に砂糖水を塗ると良いと聞きましたが本当でしょうか?
>A.本当です。
>切り傷には砂糖を其の儘つけると止血に効果的です。
>擦り傷や打ち身には濃い目の砂糖水を塗ると、止血作用と熱を取り腫れに効きます。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q118916216
>驚異の民間療法
>患部に砂糖水を塗るだけ。でもこれが凄い。
>本当は怪我をしたらすぐに塗らないと効かないらしいのだけど、
>既に青アザになった患部に塗っても効果があった。
>時間が経つとちゃんとアザが薄くなっていく。もちろんコブにも効果がある。
http://www.ne.jp/asahi/baby/butterfly/mama5.html
これでは何の説得力もないのですが、最初に書いたニセ科学を信じる人たちというのは、ああそうなのか砂糖水に効果があるんだと信じてしまうわけですね。。
最初の例は何の根拠も示さずに「効果があるから本当だ」と言っているだけ。
私たちは根拠のはっきりしない意見や伝聞を書く場合、このような断定的表現は用いず、「~のようだ」あるいは「~とされている」「私は~と思う(考える)」などといった表現を用います。
二番目の例は主観的な判断だけで「凄い効果がある」と信じている。
上記の「プラセボ効果」や「自然治癒」(打ち身ですから何もしなくても自然に数日で治るのに、塗ったために早く治ったと思いこんでいる)である可能性を除外できていません。
時間が経つとアザが薄くなっていくのは、生きている証拠です。
何度も書きますが、「効果があることは証明されていない」のと「効果が否定された」ことは同じではありません。
無論この方たちが誰かをだまそうとして書いているわけではなく、善意で良いことを知らせようとしているように思えますが、このような非科学的な考え方では、何も言っていないのと同じことなのです。
<ニセ科学の問題点>
砂糖水を塗るというケースでは、証明されていない効果が期待できるかもしれないことに加えて、親や保育者の愛情が子どもたちに伝わり、この場合は悪いことはそんなになさそうに思えます。実は、砂糖(イソジンシュガー)は褥創の治療に使われていますので、創傷治癒にプラスの効果がある可能性は否定できません。(打ち身で皮膚の上から浸透して炎症を抑えるとはとても思えませんが…)
また、中医学では砂糖は温める効果がある(黒糖は温めて白砂糖は冷やす?)とされているようです。ただし、これは経口摂取した場合で、外から塗って「熱を取り腫れに効く」というのは疑問が残ります。
いずれにせよ、その程度にノンビリと構えて「どちらでも良い」といういい加減な書き方をしているのは、砂糖水の場合、1)価格が安くインチキ商売のタネになる心配がない、2)食べられるものなので外用での安全性は問題にならない、という2点が確かめられているからであり、多くの「ニセ科学」や「ニセ科学と科学の間にあるもの」の問題は、その2点に尽きると言っても過言ではありません。
1)インチキ商売のタネになっている(詐欺または詐欺まがい)
2)安全性に問題がある(健康被害)
騙されても誰も損をしないし、何の害もないのなら、勝手に騙されていればいいわけなのですが、そうじゃないから問題なんです。
<ニセ科学と科学の見分け方>
ニセ科学の見分け方(妄想科學日報)
http://d.hatena.ne.jp/DocSeri/20070426/1177549698
「ニセ科学」入門(大阪大学サイバーメディアセンター菊池誠)
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/nisekagaku_nyumon.html
kikulog
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/
疑似科学(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%96%91%E4%BC%BC%E7%A7%91%E5%AD%A6
メールで様々なご質問をいただくことがありますが、通院中の患者さんなどの場合を除いてお返事は失礼させていただいております。ただし、今回ある方からいただいた質問は、簡単な練習問題として面白いかと思ったので、大意を抜粋してここに掲載させていただきます。最初にお断りしておきますが「打ち身に砂糖水」がニセ科学だと追及しているわけではありません。あくまでニセ科学とその周辺を考える題材としてとりあげてみただけです。
<質問>
「私の働いている職場では打ち身などに砂糖水をつけるのですが本当に効果があるのでしょうか。主任は効果があると言ってつけるのですが、自分が体験したことがないので信じられないし、他の人に聞かれても自信を持って答えられません。医学的な根拠はあるのでしょうか? S市 M」
<答>
医学的な根拠はありません。
砂糖水に効果がある可能性を全て否定する(あるいは逆に有害であると断定する)根拠もありませんが、もし効果があるとしても客観的にその差を証明できる程とは思えません。
打ち身のときには「冷却」すべきだと思います。
<解説>
ここでは砂糖水をつけると打ち身に効くかどうか、その真偽については触れないでおきます。
もし砂糖水に効果があるのであれば、それをどうやって証明すればいいのか考えてみましょう。
・砂糖水に効果があるのなら、その有効成分は砂糖(主にショ糖)と考えられるので、砂糖の抗炎症作用が、動物実験など様々な方法で確かめられること。
・種々の濃度の砂糖水を皮膚に塗ると、有効な濃度で皮膚から皮下組織、あるいは筋肉へ吸収されることが確かめられること。
・実際に臨床的に打ち身に対する効果を確かめるためには、比較対照試験が必要です。
1)「何もしない」グループと比較する
2)プラセボ(偽薬)コントロールと比較する
3)一般的に行われている治療(冷却や消炎鎮痛剤の塗布など)と比較する
1)は新薬の治験のようなボランティア(アルバイト)でないと、実際に症状のある人に「何もしない」ことを選択することは倫理的には困難。
2)は良く知られた例で、高名なお医者さんに「よく効く薬だよ」と言って処方されれば、小麦粉を固めただけの「クスリ」であっても一定の割合で改善効果が認められる(病も気から)ので、プラセボ(偽薬)よりも効くということが確かめられなければ、薬の効果ではなくプラセボ効果しかないということになります。
より厳密に行うためには、処方する医師が本物の薬か偽薬かを知っていると、無意識のうちに言動にあらわれ患者さんに対する効果に影響することが知られているため、医師も患者も知らない「二重盲検法」という方法が用いられます。
例えば、保育士さんもどちらかわからないように砂糖水と食塩水を用意しておいて、その結果を時間と共に観察し比較するというわけです。
3)は更に、砂糖水が冷却や消炎鎮痛剤と同等または優れた治療であることを証明する方法です。
いずれも、両群で統計学的な差を証明するためには、相当数のケースが必要になります。
また、砂糖水では問題になりませんが、新薬や民間療法などでは当然副作用の問題が出てきますが、ここでは省略します。
砂糖水の効果は、以上のような手法では全く確かめられていないし、これからも実証される見込みはありませんから(そんなことしても時間とお金と手間がかかるだけで誰の得にもならない)、今後も「不明」のまま「驚異の民間療法(下記サイト参照)」として言い伝えられていくのでしょう。
ではなぜ効くとされているのか。言い伝えられているのか。
ここでは「効果があることは証明されていない」と書きましたが、これはもちろん「効果が否定された」と同義ではありません。
ですから、本当に効果があるのに単に科学的に証明されていないだけ、というのが一つの可能性。
ところが、ネットで検索してみるとみつかるのは次のようなページばかりです。
<ネット上で検索された記載例>
>Q.打ち身や擦り傷に砂糖水を塗ると良いと聞きましたが本当でしょうか?
>A.本当です。
>切り傷には砂糖を其の儘つけると止血に効果的です。
>擦り傷や打ち身には濃い目の砂糖水を塗ると、止血作用と熱を取り腫れに効きます。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q118916216
>驚異の民間療法
>患部に砂糖水を塗るだけ。でもこれが凄い。
>本当は怪我をしたらすぐに塗らないと効かないらしいのだけど、
>既に青アザになった患部に塗っても効果があった。
>時間が経つとちゃんとアザが薄くなっていく。もちろんコブにも効果がある。
http://www.ne.jp/asahi/baby/butterfly/mama5.html
これでは何の説得力もないのですが、最初に書いたニセ科学を信じる人たちというのは、ああそうなのか砂糖水に効果があるんだと信じてしまうわけですね。。
最初の例は何の根拠も示さずに「効果があるから本当だ」と言っているだけ。
私たちは根拠のはっきりしない意見や伝聞を書く場合、このような断定的表現は用いず、「~のようだ」あるいは「~とされている」「私は~と思う(考える)」などといった表現を用います。
二番目の例は主観的な判断だけで「凄い効果がある」と信じている。
上記の「プラセボ効果」や「自然治癒」(打ち身ですから何もしなくても自然に数日で治るのに、塗ったために早く治ったと思いこんでいる)である可能性を除外できていません。
時間が経つとアザが薄くなっていくのは、生きている証拠です。
何度も書きますが、「効果があることは証明されていない」のと「効果が否定された」ことは同じではありません。
無論この方たちが誰かをだまそうとして書いているわけではなく、善意で良いことを知らせようとしているように思えますが、このような非科学的な考え方では、何も言っていないのと同じことなのです。
<ニセ科学の問題点>
砂糖水を塗るというケースでは、証明されていない効果が期待できるかもしれないことに加えて、親や保育者の愛情が子どもたちに伝わり、この場合は悪いことはそんなになさそうに思えます。実は、砂糖(イソジンシュガー)は褥創の治療に使われていますので、創傷治癒にプラスの効果がある可能性は否定できません。(打ち身で皮膚の上から浸透して炎症を抑えるとはとても思えませんが…)
また、中医学では砂糖は温める効果がある(黒糖は温めて白砂糖は冷やす?)とされているようです。ただし、これは経口摂取した場合で、外から塗って「熱を取り腫れに効く」というのは疑問が残ります。
いずれにせよ、その程度にノンビリと構えて「どちらでも良い」といういい加減な書き方をしているのは、砂糖水の場合、1)価格が安くインチキ商売のタネになる心配がない、2)食べられるものなので外用での安全性は問題にならない、という2点が確かめられているからであり、多くの「ニセ科学」や「ニセ科学と科学の間にあるもの」の問題は、その2点に尽きると言っても過言ではありません。
1)インチキ商売のタネになっている(詐欺または詐欺まがい)
2)安全性に問題がある(健康被害)
騙されても誰も損をしないし、何の害もないのなら、勝手に騙されていればいいわけなのですが、そうじゃないから問題なんです。
<ニセ科学と科学の見分け方>
ニセ科学の見分け方(妄想科學日報)
http://d.hatena.ne.jp/DocSeri/20070426/1177549698
「ニセ科学」入門(大阪大学サイバーメディアセンター菊池誠)
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/nisekagaku_nyumon.html
kikulog
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/
疑似科学(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%96%91%E4%BC%BC%E7%A7%91%E5%AD%A6
やたらと反乱してる詐欺紛いの疑似科学の健康サプリメントやら健康グッズの類にはメスがはいりませんね~
特許庁の取得特許みると怪しげなのがあるわあるわ
門外漢や普通の人が見たらなにがなんやらで特許取得だけで権威付けになるからなぁ……
ここでは砂糖水の効果について真偽はともかく、考え方について論じてます。
確かSAS(イギリスの軍隊)の書籍で
発展途上国で現地人の子供を治療するために
バンドエイドを貼ってたら 現地の大人が
珍しいいから剥がして 治療できないって
キリスト教の牧師に相談したら
ガーゼ+砂糖を貼るようにって忠告された。
ただでさえ普段の業務をしつつ日々難しい研究をしなきゃ置いてかれてしまう仕事なのだから。
お医者さんはお医者さんで治そうとこの治療は有効だと論理的に証明しようと頑張っているのだから感謝しなさい。
砂糖水は使いたい人だけ使えばよい。
わしも使っている。
最近の医者は、肉体の病気しか見ていないのではと、その患者の心、性格、思考を見ていないんじゃないかと。
肉体と精神は相互に関係しあっているのに、肉体だけしか見ていない気がする。
性格や思考は人それぞれで、それによって、身体にさまざまな影響を与えるようです。
最近は、運動器に問題のある子供が多いようですが、それはつまり、精神面に問題があるのではないかと思ったりしております。
人間の肉体を単なる物体、物質として扱うのが西洋医学ですから。
なんて
医学生でも知っている基礎中の基礎
なんだって
この記事を読んででそんな浅薄で失礼なな説教を経験の深い医師に垂れようというきになったのかにむしろ興味がありますが
単なるプラセボ効果(信じるものは救われる?)を述べてるとしか思えません
それがあるのは当たり前だから、それを前提として、それを差し引くために、エビデンスが必要なのです
オバサンが使った、良くなった、だから効果があったと言っているのとどこが違うか
というところから始めないとわかりませんか