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平成30年度日医母子保健講習会 自見氏講演 シンポ「成育医療の現代的課題と対策」

2019年05月10日 | こども・小児科
平成30年度母子保健講習会
2019年2月17日(日) 東京都・日本医師会大講堂

講演
「子ども政策の今日的課題
     成育基本法の成立と今後について」
          参議院議員 自見はなこ
 全ての妊婦・子どもに妊娠初期から成人期までの切れ目のない医療・教育・福祉を提供する事を目的とした成育基本法は、対決法案のあおりで廃案となるところを、超党派議連の合意と自見氏の決意により特例で12月8日に成立した。
 同法の施行により、国は成育医療等協議会を開催して基本方針を6年ごとに策定し、政府・都道府県は評価を年1回公表することが義務づけられる。議会で毎年質問していただきたい。
 虐待の温床となる懲戒権が民法改正後も残ってしまった。千葉の事件などを踏まえて児童虐待防止法に体罰の禁止を盛り込む方向で議論中である。今後、予防接種法、感染症法が改正となるが、日本版ACIPを目標に近代化をはかりたい。取り組んできた液体ミルクが承認となったが、母乳哺育の重要性を損なうものではない。

シンポジウム「成育医療の現代的課題と対策」

1) 産科領域における諸課題
     日本産婦人科医会副会長 石渡 勇
 全ての医療機関で、全ての妊産婦を対象にメンタルヘルスのスクリーニングを行い、必要な支援に繋げるための多職種連携を目的に、メンタルヘルスケアマニュアルを策定し、教育・研修システムを構築して、2017年以来実施してきた。思春期の性の問題や性暴力への支援ネットワーク、行政によるワンストップ支援センターの設置なども紹介された。HPVワクチン問題では世界が日本の動向を注目しており、コクランレビューでも高度前がん病変減少効果は疑いの余地がないとされた。支援してきたHPVワクチン訴訟は、講演後、敗訴が言い渡され、控訴の運びとなった。メディアはノーベル賞を受賞した本庶佑氏の「科学的根拠のない主張ばかりを報じてきた」という発言を報道しなかった。

2) 小児科領域における諸課題
       日本小児科医会会長 神川 晃
 虐待防止対策強化プランでは子ども家庭総合支援拠点を1700の市町村に増設し、児童福祉司も増員した。子どもの事故死は10万人あたり1.9人(2016年)まで減少した。医療的ケア児は約1.8万人で、10年で2倍近くに増加している。ひとり親世帯の相対的貧困率は5割を超え、OECD加盟国中最も高い。貧困の世代間連鎖を切るために、家庭力の向上、就学前の学習支援、給付型奨学金などの支援が必要である。フィンランドのネウボラでは全ての親子を切れ目なく支えるシステムとなっており、新生児虐待死はゼロである。日本でも子育て支援包括支援センターを2020年度末までに全国展開を目指すことになっているが、出生前に比べて出生後のポピュレーション・アプローチが少なく、1996年の厚生省局長通知[1歳前に9回、1〜3歳は年2回の健診など]は現実とは程遠い。3歳未満児の約7割は家庭で子育てしており、地域子育て支援拠点(マイ保育園)は、ネウボラと同程度なら大田区の規模で100ヶ所必要になる。

3) 成育過程におけるメンタルヘルス
         〜精神科の役割について〜
  東京医科歯科大学医学部精神科 竹内 崇
 周産期における精神疾患として、精神疾患合併妊娠と産褥期の精神障害があるが、両科のある総合病院では患者の急増に対応できない。産婦人科医会のマニュアルを基に、精神科医によるハイリスク・アプローチから、助産師・保健師および全てのスタッフが行うポピュレーション・アプローチまで段階的な対応が求められる。妊娠中はWhooleyの2項目質問票によるスクリーンングが有用である。演者の大学において、精神科・産科・新生児科・MSWによる院内連携から、地域における自殺予防、適応支援、虐待予防の支援へ移行させる取り組みが紹介された。

4)母子保健行政の最近の動向
 厚生労働省子ども家庭局母子保健課 平子哲夫
 上記の講演で紹介された諸政策に加えて、健康寿命延伸に向けたデータヘルス事業、未就学児の睡眠指針、乳幼児健診マニュアル、虐待防止ネットワーク拠点病院への虐待専門コーディネータの配置などが紹介された。

ACIP : Advisory Committee on Immunization Practices(ワクチン接種に関する諮問委員会)

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