禁煙補助薬は、ニコチンパッチと、経口薬のバレニクリン(商品名:チャンピックス)の2つが使われています。
2つの薬剤の選択は、虚血性心疾患のある方はニコチンが禁忌ですのでバレニクリンを、精神疾患のある方にはニコチンパッチを主に選択しています。(※)
同じことを表にしてみましたが、心疾患のある方はニコチンパッチが使えず、精神疾患のある方はチャンピックスは慎重投与となるので、何もない方と心疾患の方はチャンピックス、精神疾患のある方はニコチンパッチが主に使われています。
薬剤別の患者数ですが、チャンピックスの発売以降は、ほぼ9割の方がチャンピックスを選択しています。
薬剤別の成功率では、チャンピックスが64%、ニコチンパッチが42%と2割以上の大きな差がみられました。
精神疾患の患者さんは、統合失調症、うつ病など、全体の1割、31名でした。人数には重複があります。
精神疾患の患者さんの禁煙成功率は39%と低く、薬剤別で比較しても特に差はみられませんでした。
バレニクリン(商品名:チャンピックス)は、使いやすくて成功率も高く、ニコチンを投与しなくていいというメリットはありますが、吐き気などの副作用の頻度が高いことが問題となります。
(註:今回の発表では精神疾患への影響については検討していません)
今回の検討でも、チャンピックスの吐き気が圧倒的に多く、ニコチンパッチでは皮膚症状が主でした。
禁煙治療の標準手順書では、吐き気に対して吐き気止めを使うか、用量を減らすと書かれていますが、薬の副作用に対して更に薬を使うというのは間違っていると思いますので、(患者さんと相談しながら)副作用の程度と禁煙の状況に応じて減量するようにしています。
何らかの副作用により減量した人は、チャンピックスが2割、ニコチンパッチでは3分の1ですが、ここには最初から投与量を減らした人も含まれています。チャンピックスでは男性に比べて女性が3倍も高くなっています。
そこで、体重別、男女別に減量者の割合を調べたところ、 50キロ未満では半数以上が、50~60キロでも4分の1以上が減量してることがわかりました。
同じものをグラフにしてみましたが、注意したいのは、60キロ以上でも女性の減量者はほとんど減っていないということです。これを見ると、日本人の女性には用量が多すぎるのではないかと考えられます。
そして、減量した人の成功率は、減量しなかった人や全体の平均よりもむしろ高くなっています。本当に高いのかどうかはわかりませんが、少なくとも成功率は下がっていないということは言えると思います。
そこで、この2週目、8日目から1ミリグラムに増量するところを、
体重と男女別に、50キロ未満はそのまま増量せず、50~60キロの男女と60キロ以上の女性は0.5ミリを3錠までにしてみることにしました。これはまだ実施していませんので今後更に検討する必要があるかもしれません。