踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

新型出生前検査「2割見落とし」とは →染色体異常のうち16.8%はNIPTでは検出できない

2014年04月10日 | こども・小児科
この朝日の記事(↓)は見出しがダメで、本文を読めば一応理解可能ではあるけど、見出しだけでは誤解を生ずるもの。

■ 新型出生前診断、「異常」2割見逃し 米大研究(2014年2月5日)

読売の産婦人科医のコラムにそのあたり詳しく解説されています。私もわかりにくいと思って検索したら元記事を抑えてトップに検索されてきました。

■ 新型出生前検査「2割見落とし」の真相(宋美玄のママライフ実況中継)

ただ、記事中の数字がちょっとわかりにくいかもしれない。
羅列ですが書き出してみます。(自分でもこれ書いてみてわかった)

■ カリフォルニア州の出生前検査プログラム 132万4607人
     ↓
 18または21トリソミー陽性 6万8990人(5.2%) ←これが意味不明
     ↓
 うち、絨毛検査または羊水検査 2万6059人(37.8%)
     ↓
 そのうち、異常 2993人(11.5%)

  - NIPTで判定可能な異常 2489人(83.2%)
      - ダウン症候群 1592人(53.2%)を含む
  - NIPTでは見つけられない異常 504人(16.8%)

この16.8%のことを「新型出生前診断で2割見逃し」と言っているわけですが、確かにこの見出しは検査の意義も発表の意味も理解していたとは思えない。編集部でわざと誤読による驚きを与えて注意を引くように、(いま流行の言葉で言うと)「悪意をもって」つけたとしか考えられません。

ちなみに、ここでの「異常」とは染色体異常のことを指していますが、いわゆる先天性疾患のうち、染色体異常をもつものはさほど多くありません(25%程度とのこと)。

その中で、従来からダウン(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーは多いものとして知られていましたから、この3つで全体の83%という数字は大体その位かなという感じがします。

NIPT(いわゆる新型出生前診断)については以前書いたのでここでは詳しく触れませんが、たとえ年齢などの条件が適合するとしても、無条件にお勧めするわけではなく、必ず指定病院でカウンセリングを受けた上で判断していただくべきと考えています。

ところで、NIPTで検出可能なのは「21、18、13」の3つと思っていたのですが、記事中に「性染色体の異常」という言葉が出て来ます。何か新しく加わったのかと思ったら、下記のページで詳しく解説してくれています。

「性染色体スクリーニング」という誤解
「性染色体異常(ターナー症候群やクラインフェルター症候群など)をNIPTでスクリーニングすることはあり得ません」

NIPTによるスクリーニングに新しく追加された対象疾患

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
日本のデータ (温泉地獄)
2014-06-27 23:32:30
読売の記事
http://www.yomiuri.co.jp/science/20140627-OYT1T50125.html?from=ytop_ylist
これによれば、偽陽性が約10%
偽陰性は、0.0013%なので
高感度で、比較的特異性の高い検査ですね。
でも、確定診断はやっぱり羊水検査に頼らざるを得ないと思います。もう一息ですね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。