珍しく仕事で徹夜をした。不思議なもので、徹夜をしなければならない事態の解決に取り組んでいるときは夜中であっても眠気を催さない。徹夜に至った事情にも拠るのだろうが、寝ている場合ではないときは自然に覚醒するものなのかもしれない。なんとか事を収めて朝6時台の電車で帰宅する。始発はもっと早い時間にあるが、乗り換えの接続がよくないので、後片付けをしながら朝6時過ぎに職場を出るようにしたのである。
同じ場所が時間によって全く違う表情を見せるのが面白い。駅も車内も昼間とは雰囲気が違っていて同じ国とは思えないほどだ。早朝の電車でこれから仕事に出かけようという人は当然いるだろうが、東京発の中央線快速の場合には、それらしく思える人は少ない。そもそも東京駅周辺に住んでいる人というのが少ない所為もあるだろう。以前、失業して単発のバイトで早朝からの仕事をしたときには新橋からゆりかもめの始発に乗ったが、そのときはもう少し気合いの入った雰囲気だった気がする。今だからそう思うだけなのかもしれないが。
自宅の最寄り駅に着く頃には通勤通学時間帯に入り、ようやく見慣れた風景になる。街全体が始動せんとしているかのようだ。そういうなかを歩いてくるから徹夜明けは妙に覚醒しているのだろう。家に着いてほっとすると途端に睡魔に襲われる。同じ場所が、時間をずらしてみることでずいぶん違った印象に見える。たぶん、場所だけではないはずだ。自分にはひとつの生活しかないと思い込んでいるが、その気になれば少しずつ違った複数の生活を送ることができるのかもしれない。