万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の元安政策は雇用問題

2010年03月15日 15時23分22秒 | 国際経済
温首相、元切り上げ要求に反論  対米けん制、ドル安に懸念(共同通信) - goo ニュース
 昨日、北京で開かれていた全国人民代表大会において、中国の温家宝首相が、元安は輸出先の国の経済にとっても恩恵となると述べ、人民元の切り上げ圧力には抵抗することを表明しました。

 温首相の主張は、中国製品を輸入することで、先進国の消費者は廉価な製品を購入することができますし、中国に進出している先進国企業もまた、安い労働力から利益に得ているということなのでしょう。しかしながら、雇用の面から見ますと、物価水準が低く、労働者の権利が充分に保護されておらず、かつ、労働条件が劣悪な中国が、圧倒的に製造拠点としての競争力を持つことは確かです。その上、元安政策となりますと、中国への雇用流出は加速します。輸出先の消費者は、低価格の商品を手にすることができても、生活の維持に不可欠である所得を約束する雇用機会を失うのであれば、元も子もありません。

 製造拠点が移動できる現代の貿易不均衡問題は、即、雇用問題に転化します。中国政府は、自国のアンフェアな元安政策と過酷な労働政策が、他国においては雇用不安を招いている現実を直視すべきと思うのです。

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コメント (4)
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