万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

インフレ政策で財政健全化より先に財政破綻?

2010年06月15日 16時16分10秒 | 日本政治
日本は本当に公的債務問題を抱えているのだろうか?(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース
 巨額な財政赤字の前に立ちすくむ日本国政府。一つ間違えますと財政破綻となるのですが、その解決の処方箋として、フィナンシャル・タイムスは、マーティン・ウルフ氏のインフレ政策を掲載しているようです。しかしながら、この案、かなりリスクが高いのではないかと思うのです。

 一番目の提案である、国債の満期期間の延長は、既に発行済みの国債の償還時期を延期するよりも、今後発行する国債を長期国債や超長期国債に切り替えるという方法の方が穏当と言えそうです。これに伴い、日銀は、買い切りオペの対象を超長期国債に限定することも一案です。また、増税と歳出削減は、避けられないかもしれません。

 その一方で、インフレ創出の手法を熟知している中央銀行総裁の雇用や、期待インフレ率を3%とする提案には、大いに問題がありそうです。そもそも、現在の法律では、買い切りオペには上限が設定されていますし、買い戻し条件なしの日銀による国債引き受けは、禁じられています。しかも、3%のインフレが発生しますと、国債の金利は5%になるそうです。現在の低い利回りでさえ、年間9兆円もの利払いが必要です。5%ともなりますと、税収では支払い不能となります。加えて、国債が信頼性を失い、価格が半減した時点で、政府が国債を買い取ればよい、とも述べられていますが、半額でも500兆円近い買い取り資金を政府が調達することは、ほとんど不可能です。また、インフレ期待により、国民の志向が貯蓄から消費に変化しますと、金融機関の運用資金が減少し、国債の引き受け手がいなくなります。

 ウルフ氏の提案を採用しますと、財政再建はめざたものの、解決案そのものが、財政破綻の引き金を引きかねないと思うのです。インフレ政策は、隠れた増税を意味しますので、まずは歳出削減を中心に、プライマリー・バランスの回復に努めるべきと思うのです。

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コメント (36)
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