万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原子力研究―制御・処理方法の確立を

2011年04月04日 15時27分14秒 | 日本政治
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 福島第1原発事故の影響は、エネルギー政策全般に及んでおり、我が国のみならず、世界各国において、原発見直しの運動を引き起こしているようです。今回の事故は、原子力が抱える様々な問題点をも浮き彫りにすることになりました。

(1)困難な核反応の制御
 原子炉は、緊急時には制御棒によって運転が停止されますが、その後の崩壊熱の冷却には時間がかかり、冷却機能が機能不全となると、放射性物質を大量に放出するリスクに晒されます。この問題は、新式の原子炉の導入により、現在は、解決されているそうです。

(2)放射性物質の無害化と除去
 核反応に伴って放出される放射性物質は、現状の技術レベルでは、完全に無害化および除去することができません。この問題を解決するためには、医薬品開発、濾過技術、バイオ・テクノロジー、環境技術といった多様な先端技術や自然の力を利用して、研究・開発を重ねてゆく必要があります。

(3)放射性廃棄物の処理
 福島第1原発では、使用済み核燃料を収納しているプールの管理が危機を高めることになりましたが、使用済み核燃料の安全な再処理技術もまた、開発途上にあります。将来的には、再処理を繰り返すことで、ほとんど無害な低レベル放射性廃棄物化することができるそうですが、未だ研究・実験段階です(高速増殖炉「もんじゅ」などもこの研究の一環…)。

 つまり、原子力は、利用面が先行し、制御・処理面が追い付いていない、アンバランスな状況にあるのです。今回の事故を受けて、原子力の全面廃止も主張されていますが、中途半端で放り出しますと、制御方法や処理方法が確立しないまま、汚染物だけが地球上に残されることになります。原発事故で放射能汚染が広がった我が国は、むしろ、原子力の制御・処理面の研究に、率先して取り組むべきではないかと思うのです。

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コメント (9)
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