万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国前首相による異例の政策批判―民主化運動に繋がるのか

2011年04月24日 15時40分50秒 | アジア
貧しい子ども学校行けず…中国前首相が政策批判(読売新聞) - goo ニュース
 珍しくも、中国では、前首相の朱鎔基氏が、精華大学の学生の前で、現政権批判を行ったそうです。世界第二位の経済大国に成長しながら、中国では、貧しさゆえに、未だに学校にも通うことができない子供たちが大勢いると。

 経済成長と国民の生活水準の向上が比例しない理由、それは、中国の政治体制にありそうです。中国は、平等に至高の価値を与えた共産主義の表看板を、未だに下ろしてはいません。生活物資の配給や教育の無償提供は、共産主義体制の”専売特許”なはずなのですが、現実には、平等どころか、官製の”市場経済”によって共産党は利権集団と化す一方で、所得格差が広がっているのです。もし、中国が、政治的に民主化され、複数政党制が導入されていれば、国民が、選挙に際して教育の充実や福利の向上を政策綱領に掲げる政党を選択することで、貧困や未就学児の問題は、ある程度解決できます。予算措置を講じればよいのですから。一党独裁制度では、経済成長の恩恵は、軍拡に向けられるこそすれ、国民には還元されないのです。現在、中国では、中東諸国における民主化運動の伝播を警戒して、言論統制を強めているそうですが、”豊かさの中の貧じさ”の解決には、民主化に優る有効な策はないはずです(毛沢東時代の共産主義体制に回帰しても、みなで貧しくなるだけ・・・)。

 近年の中国の学生は、現体制に迎合し、保身のために民主化運動には消極的になったとも指摘されています。もちろん、朱前首相もまた、この発言で、体制批判まで踏み込もうとしたとは思えません。しかしながら、学生達は、この批判に、中国の体制変革の必要性を読み取ったかもしれないのです。。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする