万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

慰安婦像は日韓相互無理解の象徴

2017年01月08日 13時58分11秒 | 国際政治
予算成立まで解散考えず=慰安婦問題「韓国は誠意を」―安倍首相
 韓国釜山の日本領事館前に新たに慰安婦像が設置されたことから、俄かに日韓関係の雲行きも怪しくなってきました。もとより予測されていた展開ですが、釜山の慰安婦像は、日韓間における相互無理解を象徴しているかのようです。

 凡そ1年ほど前に日韓合意が成立した際には、事実関係を有耶無耶にしたままでの幕引きに対して日本国側からも不満がありました。朝日新聞社の記事撤回やネット上の情報拡散等により、既に慰安婦の実像が明らかにされておりましたし、国際社会でも、韓国の主張に疑いを挟む向きも少なくなかったからです。しかしながら、日本国政府としては、対中政策を睨んだアメリカ政府からの要請もあり、不本意ながらも日韓関係の修復に動くことになりました。この日本国側の”譲歩感”は一種の甘さとなり、”日本国がここまで譲歩するのであれば、韓国側も、誠実に合意内容を履行するであろう”とする楽観的な見通しを抱く原因となったと推測されます。

 一方、日韓合意については韓国世論の反発の方が遥かに強く、朴大統領弾劾を機とした政府批判と相まって、今日の釜山の慰安婦像設置に至ることとなります。韓国側は、日本国政府の譲歩を譲歩とは解さず、”狡賢い責任逃れ”、あるいは、”支援額が少なすぎる”と見るからです。日本国政府からの10億円の支援金支出は、韓国側にとりましては、日本国が韓国の所謂”日本軍20万人慰安婦強制連行説”の主張を認めた”証し”であり、認めた限りは、日本国側に法的責任を認めた上での謝罪をさせ、莫大な賠償金を支払わせないことには気が済まないのでしょう。韓国側の執念深さと行動力は、淡白な日本人の想像を絶しています。韓国側は、日本国とは全く別の意味で有耶無耶な幕引きに憤っているのです。

 日本側の一方的な対韓配慮が裏目に出るのはこれが初めてではなく、この展開は、これまでも何度となく繰り返されています。日韓関係については、常々相互理解が喧伝されていますが、現実には、日韓の相互無理解が解消されないままに今日に至っているのです。韓国の次期政権では正式な慰安婦合意の破棄もあり得ますので、真に相互理解に基づく解決を求めるならば、日本国政府は、韓国の国柄や国民性を十分に理解し、安易な配慮型の解決には限界がある現実を見据えるべきではないでしょうか。アメリカの政権交代によって日韓間のクッションが不在となる可能性もあり、日本国政府が事実に基づく司法解決を準備する段階は、いよいよ近づいているのかもしれません。

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コメント (1)
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