万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”行き過ぎたグローバリズム”とは隠れた植民地主義?

2017年01月23日 15時45分01秒 | 国際政治
「米国抜き」も選択肢=TPP参加国と協議へ―豪貿易相
 大統領就任式の当日において、トランプ大統領が正式にTPPからの脱退を表明したことで、TPPの発効は絶望的となりました。なおもオーストラリアのチオボー貿易・投資相は”アメリカ抜きのTPP”を模索しているそうですが、躓いた時には、一旦立ち止まって一から見直すことも、道を誤らないためには必要な態度のように思えます。

 仮に、多国間による地域貿易協定が理論通りに全ての加盟国に恩恵をもたらすならば、トランプ大統領が選挙期間に掲げたNAFTA再交渉やTPPからの離脱の訴えが、有権者を惹きつけることはなかったことでしょう。それでは、地域貿易協定が批判を浴びた原因の一つは、それを背後から支えるグローバリズムが、植民地主義と紙一重となったからではないかと推測するのです。

 植民地支配にも様々なタイプいがありますが、共通している点として、植民地とされた地域における政策権限の掌握があります。経済面を見ても、通商政策をはじめ、財政や金融などの権限も宗主国の手に移ったのです。今日では、アジア・アフリカの植民地は殆ど独立を果たしたため、同時に植民地主義も終焉したと見なされがちですが、今日のグローバリズムには、新自由主義と結びつくことで、相手国の内政に踏み込み、”改革”を要求、あるいは、強要する場面が見られます。

 植民地時代のように露骨に内政に干渉するのではなく、相手国の国民の中から新自由主義の思想を広める”伝道士”を選び、政府、経済界、マスコミ、知識層等に入り込むことで、内部から改革させているのです。この結果、各国とも、非正規社員の割合が増加すると共に派遣形態も拡大する一方で、失業、産業の空洞化、賃金の低下、所得格差、移民の増加、果ては、国民の融解といった共通の問題に直面することになったとも言えます。かくして、表向きは多様性の尊重が謳われつつも、実際には、単一化を志向するグローバリズムが、国家内部の既存の秩序をも破壊しながら全世界的に猛威を振るうこととなりました。しかも、今般の’隠れた植民地主義’は、アジア・アフリカに地域を限定せず、欧米を含めた全世界的な規模で展開されているのです。

 ”行き過ぎたグローバリズム”とは、グローバリズムと新自由主義との結合としての’隠れた植民地主義’であるとしますと、その是正には、まずは、冷酷無慈悲な新自由主義を、経済政策から切り離す必要がありそうです。NAFTAの再交渉やTPPの離脱は時代の逆行ではなく、植民地主義へと至る道からの引き返しとする見方もあながち否定はできないと思うのです。

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コメント (2)
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