万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

修正グローバリズムー国内経済を含む”生態系的発展”を

2017年01月18日 14時13分39秒 | 国際経済
米への投資表明、続々と=トランプ氏にアピール、外資も

 1980年代以降、経済成長の牽引役は、専らグローバリズムに託されてきました。グローバリズムの波に上手に乗ることが繁栄の条件とされ、各国政府とも、あらゆる分野においてグローバル経済を実現すべく自由化政策に邁進してきたのです。

 ところが、ここに来て、イギリスのEU離脱に次いでアメリカでも”アメリカ・ファースト”と唱え、保護主義的政策を公約として掲げたトランプ氏が大統領選挙に当選し、快進撃を続けてきたグローバリズムにも翳りが見えるようになりました。中国の一人勝ちも予測される上に、移民の急激な増加や貧富の格差の拡大など、一般国民からの反発を受けるような問題を引き起こすに至ったからです。そこで、グローバリズムの先駆者でもあった米英から見直しが始まったわけですが、ここで注目すべきは、内需、即ち、国内経済が経済成長に果たす役割です。これまで、海外に対する”開国”こそが、経済成長をもたらすとする神話にも似た予定調和説が支配的でした。

 しかしながら、その一方で、国内経済に対する評価は十分であったとは言い難いようです。むしろ、国内において競争力に乏しい部門は、それが、特定の産業であれ、人材であれ、何であれ、グローバル企業に市場を明け渡すことが良しとされ、全世界の市場が、原材料調達から消費地まで最も効率よく事業を分散させたグローバル企業の製品で埋め尽くされることが理想とされたのです。運良く生き残った国内企業も、買収によってグローバル企業の傘下に組み込まれ、下請け的な存在に甘んじるしかありません。その末に予測される光景とは、自由で活力あふれる市場とはほど遠いものであり、最先端技術の導入を以って進化や発展を称しつつ、既定路線としてグローバル企業から”与えられた社会”に過ぎないのです。経済発展にも理想的なモデルがあるならば、それは、先進国と新興国、並びに、途上国との間に雇用をめぐる深刻なゼロ・サムが発生せず、一般の人々の生活レベルの質的向上に資し、かつ、政治的な安全保障及び社会的な安定を脅かさないものであるはずです。

 
 そして、行き過ぎたグローバリズムが批判の矢面に立つ今日にあってこそ、国内経済の発展方法に対する関心は高まって然るべきではないでしょうか。一定範囲での内需の保護と質的な拡大こそ、この問題を解くキーワードとなるからです。貿易における一定の規制は短期的には貿易量の減少を招きますが、内需が拡大すれば、やがては輸入の増加へと繋がり、長期的には、世界経済全体を好転させる効果も期待できます。また、相互に一定の保護的措置を認めるルールがあれば、国際レベル、並びに、国内レベルにおける格差の拡大を止めることもできます。個人からグローバル企業に至るまで、様々なレベルの経済主体が、それぞれの個性や特性を生かし、調和しながら発展を遂げる経済、言うなれば、”生態系的発展”を実現することは、今日に生きる人類に課せられた課題ではないかと思うのです。

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