万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国境の内外調整機能の再確認をー行き過ぎたグローバリズムの修正

2017年01月12日 14時04分02秒 | 国際経済
NYダウ平均株価 トランプ次期大統領会見中に大きな変動
 生物には、細胞膜や細胞壁があり、有益なものは取り入れる一方で、外部から有害物などが侵入しなよいう常に内外の出入りを調整しています(選択的透過性)。この内外調整機能が働かなくなると生物は死滅するのですが、今日の国境をめぐる問題を見ておりますと、つい、この生物の仕組みが頭に浮かびます。

 1980年代以降に加速化した経済グローバリズムは、国境の開放によるあらゆる要素の移動自由化が目標とされました。EUは、まさにこの理想追求のトップランナーであり、市場統合プロジェクトに伴って、もの、人、サービス、資本の自由移動が促進されました。EUレベルではないにせよ、改革開放路線を選択した中国を含め、凡そ全世界の諸国がこの波に乗り、国境を低くする方向へと邁進したのです。日本国内でも、”第二の開国”なる言葉も聞かれました。

 しかしながら、もの、人、サービス、資本はそれぞれ性質が違いますし、移動性にも強弱あります。しかも、生体と同様に、一旦、内部に取り込まれますと、国内に甚大な影響を与える場合も少なくありません。経済面を見れば、製造拠点の移転や外国人労働者の絶え間ない移入により雇用が破壊されたり、外国製品の大量輸入によって自国の企業が淘汰される場合もあります。また、社会面を見れば、不良外国人が移民や難民として内部化されれば当然に治安は悪化しますし、善良な外国人であったとしても文化や慣習の違いから摩擦が生じ、社会的な分裂をもたらすことでしょう。政治分野に至っては、工作員やスパイ天国ともなりかねないのです。

 筋金入りのグローバリストから見ますと、国境とはあってはならない絶対悪なのでしょうが、この見方も、偏狭すぎるように思えます。国境の消滅を要求することは、人間社会の維持に不可欠な機能を担ってきた国家に対して死を要求するに等しいからです。自由化一辺倒に流れるよりも、今一度、国境の内外調整機能を再確認し、相互に安全や安定を確保できる範囲での、国家間の違いに配慮した国境調整を相互に認め合う方が、より調和的な共存共栄の世界により近づくことができるのではないでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする