万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国は”春節”を全世界の正月にしたい?-暦を支配する者が世界を支配する

2017年01月30日 13時55分46秒 | 国際政治
訪米したメイ首相にも二つの顔――中国CCTVで春節の挨拶
 中国では、1月28日から”春節”が始まり、国内での祝賀行事や帰省ラッシュに留まらず、この時期には中国人海外旅国客も増加するそうです。春節とは旧暦の正月を意味しますが、この時期における近年の中国の動きを見ますと、中国の世界支配を狙った戦略が潜んでいるように思えます。

 中国大陸では、清朝の滅亡後、グローバル・スタンダードに合わせてグレゴリウス暦が採用され、中華人民共和国の成立に際しても、グレゴリウス暦の1月1日を元旦とする一方で、旧暦の正月初一を春節と定めたとされています。新旧二つの正月が並ぶ状況となったのですが、両者を比較した場合、春節の方に重きを置いているのは国を挙げてのお祭り騒ぎからも見てとることができます。中国政府も、この日を特別の日として尊重し、今日では、各国政府から積極的に祝賀のメッセージを受け付けています。今年の春節には、グレーレス国連事務総長、イギリスのメイ首相、ユネスコのボコバ事務総長、エスピノサ国連気候変動枠組条約事務局長、陳馮富珍WHO事務局長、ラガルド・IMF専務理事、バッハIOC会長、シュワブ・世界経済フォーラム(ダボス会議)、オーストラリアのターンブル首相といった錚々たる顔ぶれが祝賀メッセージを送ったそうです(『ニューズウィーク』ネット版より)。何れも親中派としても知られますが、中国の春節に対する力の入れようは、尋常ではありません。

 この点、明治時代に至ってグレゴリウス暦を採用した日本国の対応と比較しますと、中国の春節への拘りは、一層、際立ちます。日本国の場合には、地方や一部の催事などでは旧暦を残しつつも、新暦採用とほぼ同時に、旧暦の行事を新暦上のカレンダーの月日に移動させています。大晦日からはじまり、初詣も、正月の祝賀行事も、年賀状やお年玉の慣習も、およそ、グレゴリウス暦に沿って行われます。


 それでは、何故、中国は、かくも春節に固執するのでしょうか。おそらく、その起源は、世界の支配者たる皇帝を頂点とする中華思想にあるのではないかと推測されます。即ち、古来、中国大陸では、暦を支配する者が世界を支配する者と考えられており、それ故に、”世界の支配者”であるべき中国の”皇帝(国家主席?)”が他者の暦に従うことはあってはならない、と考えているのではないでしょうか。そして、今日、経済力のみならず、軍事力を付けた中国は、全世界に対して中国の暦を押し付けようとしているように思えるのです。果たして将来、中国の春節が全世界の正月となる日は訪れるのでしょうか。

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コメント (6)
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