万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日米同盟の双務化問題-陰謀リスク

2019年06月27日 15時07分23秒 | 国際政治
本日の報道に依りますと、先日、米ブルームバーグ通信社が報じたトランプ米大統領による日米安保破棄発言は事実らしく、同大統領自身が日米同盟への不満を漏らしているそうです。最大の不満点として、日米同盟に定められた両国間の義務の不公平性が挙げられていますので(不平等条約?)、日米同盟破棄への言及の真意は、破棄に向けた布石と云うよりも、日本国側に対する防衛経費の負担要求、あるいは、タンカー攻撃事件を機とした海洋警備の協力要請にあるものと推測されます。

 それでは、日本国政府は、トランプ大統領の求めに対してどのように対応するのでしょうか。実のところ、ここで考えなければならないのは、陰謀と云う厄介な問題です。日本国内では、近年に至るまで‘この世には陰謀は存在しない’とする性善説が支配的でした。しかしながら、様々な方面から情報が洩れ伝えられ、かつ、検証が加えられるにつれ、むしろ、陰謀の実在を想定しなくして現実の歴史の流れを説明することが困難となっています。陰謀論が一笑に付せなくなった現実を踏まえますと、否が応でも二つの前提を準備せざるを得ないのです。

 二つの前提とは、陰謀が存在しない無陰謀仮定と陰謀が存在する陰謀仮定です。このため、日本国政府は、陰謀の有無による2つ、及び、両者が混在する混在仮定のケースを合わせて、少なくとも3つの基本的な対策を準備しておく必要があるのです(もちろん、事実が判明した場合は一つに絞ることができる…)。

 最も対策が容易であるのは、無陰謀仮定です。通商面で火花を散らしている米中対立は氷山の一角であり、大局的に見れば自由・民主主義と全体主義との間の価値観、あるいは、世界観をめぐる対立が表面化したに過ぎません。仮に、中国やロシアが、暴力を以って国際法秩序を破壊し、他国の自由や民主主義を手段を選ばずに踏み躙るならば、日本国を含む自由主義諸国は、自らの価値観をかけて全体主義国家と対峙せざるを得なくなります。乃ち、無陰謀仮説では、日本国政府は、来るべき全体主義国との全面対決に備えて日米安保を強化し、両国間での双務性を高める方向で対応することとなりましょう。

 それでは、陰謀が存在する場合には、日本国政府は、どのように対応すべきなのでしょうか。ここで云う陰謀論は、三度の世界大戦を経た国際秘密組織による世界支配の完遂です。ハルマゲドンとは『新約聖書』の「黙示録」に描かれている神の裁きのシーンなのですが(神の裁きに対して悪魔は地上の国王の軍を集めて対抗しようとする…)。また、偽書ともされる『シオンの議定書』にも、各国の独裁者を背後から操る形で世界支配を達成する計画が記されていますので、何れにしても、全人類が計画的に第三次世界大戦に導かれるリスクは否定できないのです。

 この仮定に基づけば、かのトランプ大統領も国際陰謀組織の‘駒’の一つに過ぎず、日米同盟強化、あるいは、日本国の負担増の要求は、人類を騙す壮大なる‘八百長’である世界最終戦争のシナリオに日本国が組み込まれることを意味します。来るべき世界最終戦争では、日本国は、アメリカを中心とする自由主義陣営の一角として中ロを枢軸とする全体主義陣営と戦い運命となるのです。そこで問題となるのは、どちらの陣営が勝利するのか、という戦争の勝敗です。茶番劇なのですから、世界を支配するに至る勝者については同シナリオの作者が予め決めているはずです。世界、並びに、人類支配が目的であるならば、世界最終戦争の勝者が、全世界の諸国、並びに、人類に自由を与えるはずもありません。となりますと、勝者は、全体主義陣営と想定せざるを得なくなるのです。

 陰謀を仮定すると、日本国は、戦争に巻き込まれるのみならず、敗北した上に全体主義体制を押し付けられ、かつ、国際秘密組織による陰湿で無慈悲な支配を受けることとなります。この未来は受け入れ難く、日本国政府は、まずは、あらゆる情報ルートを総動員して陰謀の有無を全力で確認する必要がありましょう。つまり、陰謀の有無を確かめない限り、日本国政府は迂闊には動けないのです(もちろん、陰謀が確認、あるいは、発覚した時点で、日本国政府は、同シナリオから逸早く降りる…)。

 そして、仮に、陰謀の有無が速やかに確認できない場合には、混在仮定に基づいて行動する必要も生じてきます。陰謀仮定にあっては、世界最終戦争において自由主義側、否、「黙示録」を思い浮かべ絶対善なる神が勝利すると信じて国際秘密組織に積極的に協力している勢力もありましょう。また、自国の防衛、並びに、自由と民主主義を護るために愛国心に燃え、命を賭して戦う覚悟の国民も少なくないことでしょう。祖国、あるいは、人類を救おうとする善人と他者を騙して隷従化しようとする悪人とが曖昧模糊として混在する状態に置かれるのですから、このケースが3つの中で最悪です。同ケースでは、実際に陰謀が存在していた場合、少なくとも国民が何も知らないままに戦争に強引に引き摺られてしまう可能性が高く、危険極まりないのです(もしかしますと、第二次世界大戦はこの状態であったかもしれない…)。日本国政府が、情報の収集と分析に失敗する、あるいは、日本国政府もまた‘駒’の一つである場合には、否が応でもこの状態に陥ることとなりましょう。

 それでは、混在型となる場合、何らかの打つ手はあるのでしょうか。第1に考えられる手は、陰謀のシナリオを狂わしてしまうことです。たとえ予め全体主義側が勝利するものと定められていたとしても、その結果を覆すのです。つまり、仮に全体主義国との戦争に至った場合、アメリカをはじめ、他の諸国が敗北に動こうとも、日本国は、持てる力を全て注ぎ込んで最後まで自由と民主主義のために闘うのです。

第2の手段は、全体主義国にあって政府から抑圧されている一般国民の良心を呼び覚まし、自由と民主主義のための共闘を訴えることです。これは、無陰謀仮定においても有効な手段なのですが、全体主義国を内部崩壊に導くことができれば、陰謀の有無にかかわらず、人類は全体主義化の恐怖から解放されることでしょう。

そして第3の手段は、戦争に際して陰謀の有無に関する問題があることを、国際社会に訴えることです。陰謀があり得ることを多くの人々が広く知るに至れば、日本国政府をはじめとして各国政府とも判断に際して慎重にならざるを得ないことでしょう。また、陰謀の可能性がある以上、事実の判明次第では、何時でも政策を変更できるように柔軟性を持たせておくことも重要な備えともなりましょう。

以上に幾つかの対策を考えてみましたが、先ずは、陰謀の有無に関する事実の確認こそ肝要です。戦争に関する陰謀リスクを直視してこそ、日本国は、歴史の失敗を繰り返すことなく、そして、騙されることなく危機を回避できるのではないかと思うのです。

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コメント (12)
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