万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ユダヤ自治州と中国黒龍江省を結ぶ大江鉄道大橋建設の狙いとは?

2019年06月09日 12時30分37秒 | 国際政治
今年の3月、ロシアと中国との間ではじめてアムール川に大江鉄路大橋が完成し、正式の開通式を待つばかりとなりました。同鉄橋は、ロシア側のユダヤ人自治区のニシュネレンスコエと中国側の黒竜江省ジャムス市とを繋いでおり、年間凡そ21億トンの物資の輸送が可能となるそうです。同鉄橋はユダヤ自治州が関わるだけに、今後の国際情勢にも影響を与えるように思えます。

ユダヤ人自治州とは、1928年にスターリンによって少数民族であるユダヤ人の文化を保護するための民族区として設置されました。設置当初は、ソ連邦西方のウクライナ等から多くのユダヤ人が移住してきたものの、スターリン時代に吹き荒れた大粛清により同州の指導者等が迫害を受けるに至るとユダヤ人の人口は激減し、今では全住民の1%以下に過ぎません。大江鉄路大橋の開通によって中国との貿易が拡大すれば、同州での生産活動も活発化することが予測されますので、プーチン大統領は、労働人口を増やすためにイスラエルの建国と共に大挙して同国に‘帰還’したロシア系ユダヤ人を同州に呼び戻そうとしたのかもしれません。

同時に、ロシア系ユダヤ人帰還政策は、プーチン大統領による中東問題解決策でもあるとする指摘もあります。中東紛争の主要原因の一つは、イスラエルによる国境を越えた入植地の拡大にあるからです。乃ち、農地を欲するイスラエルのユダヤ人、あるいは、入植者たちが同大統領の呼びかけに応じてロシアに移住すれば、イスラエルの周辺諸国に対する膨張圧力が減少し、延いては入植地の放棄もあり得るかもしれないからです。ユダヤ人は、金融を生業とする民族との印象が強いのですが、伝統的には農業従事者も少なくなかったようです(因みに、ユダヤ系財閥のロスチャイルド家は、モンゴル系のカーンを名乗る時期もあれば、農民を意味するバウアーを名乗った時期もあったらしい…)。ソ連邦が採用していた集団農場制度であるソフホーズやコルホーズはイスラエルのギブツと酷似しており、あるいは、共産主義体制とは、ユダヤ農業モデルであったかもしれません。

プーチン大統領にとりましては、ユダヤ自治州の農業人口を増やすと同時に中東問題をも解決に導くのですから、ユダヤ系ロシア人の帰還政策は一石二鳥なのでしょう。あるいは、ユダヤ金融からの対ロ投資をも呼び寄せる効果も期待できますので、一石三鳥なのかもしれません。その一方で、軍事的な側面から見ますと、中ロの陸路による直接的な接続は、両国間の軍事協力を促進するリスクをも秘めています。何故ならば、軍隊や兵器のみならず、あらゆる軍事物資の両国間での輸送や融通が可能となり、有事にあっては両軍による広域的な戦略展開もあり得るからです。

大江鉄路大橋の中国側の対岸に当たる黒竜江省とは、かつては満州国の一部であり、同国にユダヤ人を移住させる河豚計画があったことはよく知られています。あるいは、イスラエルからユダヤ自治州にユダヤ勢力の重心が移動することで、極東地帯における同勢力の影響力が増す可能性も否定はできません。見方を変えれば、ユダヤ自治州は、ロシアのみならず、中国、さらには、周辺諸国をも水面下でコントロールするための一大拠点となるかもしれないのです。

明治以来、日本国内にもユダヤ系勢力が浸透しておりますので、同勢力の東方への重心移動は、地理的に近い日本国にも重大な影響が及ぶこととなりましょう。同勢力は、巧妙な全体主義化によって他国を支配する傾向にありますので、ゆめゆめ全体主義陣営に組み込まれないよう、日本国の政府も国民も、警戒感を以ってユダヤ自治州をめぐる動きを注視すべきではないかと思うのです。

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コメント (10)
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