万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国連が越えられない壁

2009年07月01日 16時01分26秒 | 国際政治
安保理改革で拒否権、変更許さず 5常任理事国(共同通信) - goo ニュース
 国連の機構改革が議論される度に、常任理事国の拒否権が問題として持ち上がります。しかしながら、国連の前に立ちはだかる最も高い壁は、別のところにあるように思うのです。

 拒否権制度には、常任理事国の一国でも反対すると決議が成立しない、あるいは、常任理事国が侵略を行った場合には国連は無力化する、といった問題点があります。こうした制度上の問題点は、指摘されてるように是正されるべきなのでしょうが、その一方で、如何なる決定のシステムを作っても、完全に戦争を防止したり、侵略行為に対して制裁を科すことができない、というより致命的な欠陥があります。何故ならば、拒否権を廃止し、多数決制を導入したとしても、反対票を投じた諸国や侵略行為を咎められた諸国は、決定に従わないか、国連を脱退する可能性が高いからです。このことは、戦前の国際連盟が戦争を防止できなかった状況に類似しており、特にこの可能性は、軍事大国である現在の常任理事国が侵略行為に及んだ場合、相当に高くなります。国連の制度改革を行えば、すべての問題が解決すると考えるのは、楽観的に過ぎるのです。

 国連には、国連を必要とする時には役に立たず、国連が不要になる時期に至って、はじめて機能するというパラドクスがあります。国際社会において、政治的な対立がある間は、国連の限界を見極めた対応が必要であり、むしろ、国際法を守ろうとしない諸国の行動を牽制し、抑止するほうが、よほど平和に貢献すると思うのです。

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