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寒く、張り詰めた空気のなかで
空はきんと音がするほどの硬度を保つ。
季節のなかで
とりわけ富士山が美しく見えるのは冬だ。
昨年末までは暖かかったので
冠雪が少なく
何か物足りなさを感じていた。
このところの寒波で各地に雪。
そのタイミングで富士を見に行くことができた。
快晴である。
淀みも曇りもない青空の下の富士。
足柄峠、乙女峠、箱根恩賜公園、大観山の4ヶ所を移動して
富士の姿を見に行った。
大観山の頂上には
MAZDAスカイラウンジという
そこからは富士も相模湾も、遠くには
房総半島まで360°眺められる建物がある。
晴れてはいたが外は-4℃。
風が凪いでいたのでさほど寒さは感じなかったが
暖かい建物のなかで
じっくり富士を眺めることができた。
何も考えずに。
あの優美なフォルムのうちにある猛々しさ。
激しさを内に秘めながらの静けさ。
たおやかでいるようでありながらの厳しさ。
富士の魅力は
相反する要素をその懐に合わせもつからなのかもしれない、
とふと思った。
自然は厳しく優しい。
自然は厳しく豊かでもある。
自然のなかには常に生と死がある。
美しいものへの畏怖、畏敬。
美しいものは恐ろしいものである。
自然の中にはすべての要素がある。
ただ、ただ、それを味わった。
それを忘れないでいることだ、と思った。
人間がいかに愚かなものであることかも忘れてないけないのだ。
いついかなるときでも。