50年代、Hank Mobley は相当な人気者だったようです。 正直、聴いていてそんなに感動するわけではありません。
音はボソボソと野暮ったいし、フレーズもたどたどしく、いい印象に残るものがある訳でもない。
聴き手は○○派などと勝手に分類するのが好きですが、この人はそういうカテゴライズにもうまく収まらない人です。
誰か似ている人がいるか、というとなぜか誰も思い浮かばない。
本人の人柄も、非常に静かでおとなしく、1人でいることを好む人だったそうです。 ステージが1つ終わると、黙ってライブハウスの
外へと出て行き、通りに停めてある自分の車の中で煙草を吸いながら次のステージの時間が来るまで1人で待っているような人でした。
ミュージシャンとして1人で喰っていくには自分をどんどんアピールして自分のことを知ってもらわなければいけないでしょう。
アメリカのレコードで、それはジャズに限らずロック、カントリー、ブルース、ポップスなど全般ですが、ジャケットに本人の顔写真が
大きく写っているものが圧倒的に多いのは、広大なこの国ではとにかく自分の顔をまずは憶えて貰わなければいけないからです。
そのため、審美的に見ればげんなりするジャケットデザインが多くて、これじゃ逆に売り上げが落ちちゃうよと思ったりしますが、
まあラジオが第一のチャネルだったこの国の事情を考えればこれは仕方なかったんだろうと思います。
そんな状況の中で、物静かなこの人が多くの週末のセッションやレコーディングに呼ばれたのは不思議なことです。
当時は一流のサックス奏者が物凄くたくさんいたわけで、そんな中でなぜおとなしいこの人だったのか、ということになるわけです。
いくら繋ぎのつもりだったとはいえ、Miles Davis でさえこの人をグループのメンバーに入れたのですから。
ブルーノートやプレスティッジにたくさんのリーダー作があって、今はそのどれもが非常に高価な値段になっているわけですが、
私がこの人の演奏で1番素晴らしいと思うのは、これです。
( The Jazz Message Of.... Savoy MG 12064 )
これは別に Hank Mobley がリーダーのレコードというわけではなく、Savoyが行ったいくつかの同系統のセッションを集めて1枚のアルバムに
したレコードで、Hank Mobley のセッションはA面の4曲だけなので、実際のリーダーは Donaln Byrd だろうと揶揄されたりして、ここでも
不遇な扱いをされたりしています。
この人は実は演奏の出来に結構波がある人で、レコードを注意深く聴くとそれがよくわかります。 ブルーノートの諸作もおおざっぱに言うと、
半分くらいは調子が悪い感じなんです。
( Hank Mobley Sextet Blue Note 1560 )
例えば、ここでの Mobley はとにかく調子が悪いです。 Mobleyだけ見れば普通ならボツアルバムになってもおかしくないような出来ですが、
幸い他のメンバーはいつも通りの闊達な演奏なので、なんとか発売されたのでしょうね。 私の勝手な想像ですが、当初は他のレコードと
同様にクインテットで録音する予定だったのに、あまりに Mobley の調子が悪いので急遽 John Jenkins が呼ばれたんじゃないでしょうか。
一方、最初のSavoyセッションは Mobley はどの曲も流れるようで心に残るフレーズを全編通して吹いていて、素晴らしい出来です。
特に、Madeline というバラードの深い音色と演奏にはグッと心を鷲掴みされます。 Yusef Lateef や Ben Webster のバラードを
聴いた時のような感動があります。
( Jazz Message #2 Savoy MG 12092)
こちらは続編という扱いになっている第2集で、Lee Morgan が参加しています。 収録された4曲はどれも似たような曲調とテンポで
区別がつきにくく、全体で大きな1つのセッションという感じです。 Lee Morgan は上り坂の若者らしいブリリアントな音と演奏で
一番目立つわけですが、それとは好対照に Mobley は渋く落ち着いた演奏に終始していて、これがうまく全体を1つにまとめています。
これを聴いて、なぜ Hank Mobley が当時引っ張りだこだったのか、理由がよくわかるような気がします。
これこそが、Hank Mobley 最大の強みだったんですね。 こういうサックス奏者、他にはいませんから。
音はボソボソと野暮ったいし、フレーズもたどたどしく、いい印象に残るものがある訳でもない。
聴き手は○○派などと勝手に分類するのが好きですが、この人はそういうカテゴライズにもうまく収まらない人です。
誰か似ている人がいるか、というとなぜか誰も思い浮かばない。
本人の人柄も、非常に静かでおとなしく、1人でいることを好む人だったそうです。 ステージが1つ終わると、黙ってライブハウスの
外へと出て行き、通りに停めてある自分の車の中で煙草を吸いながら次のステージの時間が来るまで1人で待っているような人でした。
ミュージシャンとして1人で喰っていくには自分をどんどんアピールして自分のことを知ってもらわなければいけないでしょう。
アメリカのレコードで、それはジャズに限らずロック、カントリー、ブルース、ポップスなど全般ですが、ジャケットに本人の顔写真が
大きく写っているものが圧倒的に多いのは、広大なこの国ではとにかく自分の顔をまずは憶えて貰わなければいけないからです。
そのため、審美的に見ればげんなりするジャケットデザインが多くて、これじゃ逆に売り上げが落ちちゃうよと思ったりしますが、
まあラジオが第一のチャネルだったこの国の事情を考えればこれは仕方なかったんだろうと思います。
そんな状況の中で、物静かなこの人が多くの週末のセッションやレコーディングに呼ばれたのは不思議なことです。
当時は一流のサックス奏者が物凄くたくさんいたわけで、そんな中でなぜおとなしいこの人だったのか、ということになるわけです。
いくら繋ぎのつもりだったとはいえ、Miles Davis でさえこの人をグループのメンバーに入れたのですから。
ブルーノートやプレスティッジにたくさんのリーダー作があって、今はそのどれもが非常に高価な値段になっているわけですが、
私がこの人の演奏で1番素晴らしいと思うのは、これです。
( The Jazz Message Of.... Savoy MG 12064 )
これは別に Hank Mobley がリーダーのレコードというわけではなく、Savoyが行ったいくつかの同系統のセッションを集めて1枚のアルバムに
したレコードで、Hank Mobley のセッションはA面の4曲だけなので、実際のリーダーは Donaln Byrd だろうと揶揄されたりして、ここでも
不遇な扱いをされたりしています。
この人は実は演奏の出来に結構波がある人で、レコードを注意深く聴くとそれがよくわかります。 ブルーノートの諸作もおおざっぱに言うと、
半分くらいは調子が悪い感じなんです。
( Hank Mobley Sextet Blue Note 1560 )
例えば、ここでの Mobley はとにかく調子が悪いです。 Mobleyだけ見れば普通ならボツアルバムになってもおかしくないような出来ですが、
幸い他のメンバーはいつも通りの闊達な演奏なので、なんとか発売されたのでしょうね。 私の勝手な想像ですが、当初は他のレコードと
同様にクインテットで録音する予定だったのに、あまりに Mobley の調子が悪いので急遽 John Jenkins が呼ばれたんじゃないでしょうか。
一方、最初のSavoyセッションは Mobley はどの曲も流れるようで心に残るフレーズを全編通して吹いていて、素晴らしい出来です。
特に、Madeline というバラードの深い音色と演奏にはグッと心を鷲掴みされます。 Yusef Lateef や Ben Webster のバラードを
聴いた時のような感動があります。
( Jazz Message #2 Savoy MG 12092)
こちらは続編という扱いになっている第2集で、Lee Morgan が参加しています。 収録された4曲はどれも似たような曲調とテンポで
区別がつきにくく、全体で大きな1つのセッションという感じです。 Lee Morgan は上り坂の若者らしいブリリアントな音と演奏で
一番目立つわけですが、それとは好対照に Mobley は渋く落ち着いた演奏に終始していて、これがうまく全体を1つにまとめています。
これを聴いて、なぜ Hank Mobley が当時引っ張りだこだったのか、理由がよくわかるような気がします。
これこそが、Hank Mobley 最大の強みだったんですね。 こういうサックス奏者、他にはいませんから。