Lalo Schifrin / En Buenos Aires Grabado en Vivo !! ( アルゼンチン RCA VIctor AVS-4096 )
ラロ・シフリンがピアノ・トリオにギターを加えてブエノスアイレスで行ったライヴパフォ-マンスだが、詳細はよくわからない。 故郷への凱旋公演という
こともあってか、観客の熱狂ぶりが何だか凄い。 音楽に熱狂する以前に、スターを前にした熱狂ぶりのようだ。 シフリンのMCもやたらと長く、演る側も
聴く側も気合い十分でその熱気がしっかりと記録されている。
若い頃にパリの音楽院に留学してメシアンに師事したりしながらもジャズへの想いが断ち切れずにズルズルとその道に進んだけれど、結局ジャズミュージシャン
としては身が立てられなかった。 その理由がここにも記されている。 いわゆるジャズのフィーリングが希薄なのだ。
別に「アメリカのジャズが絶対」という訳ではないし、この人はアルゼンチン生まれなのだからアメリカ音楽が身に沁みついていないのは当然なのだけど、
それでも他のラテン・ジャズと比べるとあまりにその音楽は脱色されていてあまり印象に残らない。 ラテン音楽独特の哀感も感じられないし、ジャズと
自身のアイデンティティーの折り合いを結局は上手くつけられなかったように思える。 サントラの世界ではジャズをベースにしたサウンドで大成功したけれど、
本人的にはどういう気持ちだったのだろうと要らぬ心配をしてしまう。 ゴリゴリのジャズ愛好家の多くはラテン・ジャズには後ろ髪をひかれながらも
案外のめり込まないものだ。 それはラテン・ジャズはやっぱりアメリカのジャズとは何かが違う、と直感的に感じるものがあるからだろうと思う。
ただ、そんな風にジャズという狭い言葉にこだわらずに聴けば、艶めかしく優れたインスト音楽として愉しめる。 演奏は上手いし、リズムも素晴らしい。
熱狂する観客に煽られて、演奏が発する熱も凄い。 ジャケットがボロくて安レコだったので聴くことができたようなものだけど、ジャズのレコードからは
あまり感じることはないような、独特の南米の熱を感じることができるレコードだった。