Dave Brubeck & Paul Desmond / 1975 The Duets ( 米 Horizon SP-703 )
デイヴ・ブルーベック・カルテットは、元々はブルーベック&デスモンドと名乗っていて、当時はベースやドラムはメンバーが固定していなかった。
ファンタジーからコロンビアに移籍して、ジーン・ライトとジョー・モレロが加わってからスケールの大きな演奏をするようになったけれど、デビューして
しばらくはこじんまりとした親密な音楽をやっていた。 1975年のこのアルバムは、そういう若い頃の2人を思い出させる。
ブルーベックのピアノは優しいタッチで、デリケートな演奏に終始する。 叩きつけるような、といって敬遠されるコロンビア時代の姿はここにはない。
そしてデスモンドのアルトがいつものように静かに、霞むような音色で歌う。 何という、慈愛に満ちた音楽なんだろう。
2人の好きな楽曲が選ばれていて、どの曲も過去の演奏の発展形としてより成熟した演奏になっている。 "Stardust" はデスモンドのお得意のフレーズが
満載だし、"Koto Song" はこの演奏が最も出来がいい。 この2人は結局のところ、若い頃とは何も変わっていない。 でもそれが退屈なマンネリ感に
堕することなく、いつ聴いてもフレッシュな感じがあるというのが凄いのだと思う。
このレコードは音もよく、デスモンドの息遣いやパッドを操る音も生々しく再現される。 こんないい音でデスモンドのアルトが聴けるのは幸せだ。
それだけでも素晴らしいことなのに、2人の奏でる音楽の優しさと気高さに心を打たれる。 これは間違いなく傑作。 デスモンドもお気に入りだったらしい。