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Miles Davis / Miles ( 米 Prestige PRLP 7014 )
3番目に好きなマイルスのレコードは、この "小川のマイルス"。プレスティッジにはもう1枚好きな "And The Modern Jazz Giants" があって、
こちらは同率3位。このあたりまでは明確に順位付けできるが、これら以外はみなどんぐりの背比べで、順位付けは難しくなる。
コルトレーン、ガーランド、フィリー・ジョー、チェンバースというおそらくは歴史上初めてと言っていいかもしれない固定メンバーによるジャズバンド
が作ったアルバム。まあ、実際はこの1ヵ月前に内密にコロンビアのスタジオで "'Round About Midnight" の一部を収録しているので、レコーディング自体
これが初めてというわけではない。1955年11月16日に録音されている。
レギュラー・クインテットとして始動まもない時期ということもあり、演奏は手堅く纏まったものとなっていて、全員背筋がピンと伸びた感じだ。
自由なプレイよりも音楽的な纏まりや体裁の良さが重視されている。そこがいい。プレスティッジのこれまでの演奏はラフで、出来不出来の波が
目立っていたが、ここではグループとしてのスタイルやコンセプトが急速なスピードで出来つつあり、その様子が手に取るようにわかる。
ジャズらしいダイナミクスやざらっとした感じはなく、こじんまりと纏まっているところからあまり評価されていないようだけど、この清潔感というか
バランス感が私には好ましい。中でも、"Stablemates" の折り目正しいダンディズムに溢れた演奏が好きだ。抑制されたテーマ部の処理がカッコいい。
この頃のマイルスの影のブレーンはギル・エヴァンスだったから、これも彼のアレンジなのかもしれない。
ヴァン・ゲルダーの録音も良好で、マイルスのミュートの音が濡れている。どの楽器の音もしっかりと立っており、見事な音場感で再生される。
冒頭の "Just Squeeze Me" のマイルスのミュート音の生々しさはプレスティッジ随一かもしれない。
パーカーのバンドで騒々しくけたたましい音楽の渦中にいたマイルスが自己のバンドで描いたのがこういう静謐で澄みきった世界だったというのは
意外だ。でも、このアルバムは本当はナイーヴだったマイルス・デイヴィスの内的世界が端的に表現された貴重なアルバムだと思う。
取り敢えず順位付けでマイルスのアルバムを見てきたが、本当は順位なんてものには意味はない。それは何かを語る際のただの便宜的なツールであり、
自分の中での愛着の度合いというか敬意の度合いの高いものを並べたものでしかない。そうでもしない限り、この多彩な世界を語るのは難しいのだ。