Barbara Carroll / We Just Could't Say Goodbye... ( 米 RCA Victor LPM-1296 )
聴けば聴くほど好きになっていくバーバラ・キャロル。 やはりこの人の弾くピアノは他の人が弾くピアノとはちょっと違う。 聴くたびに心地好い衝撃を受けるので、
今一番買えると嬉しいアーティストの1人だけど、彼女のレコードは安レコでしか買わないという厳格なルールを自分に課しているので、これが案外難航している。
金を出せば簡単に集まるけれど、それでは何も面白くない。
全編がおだやかでゆっくりとした子守歌のような演奏で、上品で洗練されている。 ピアノの音数は抑えられていて、決して弾き過ぎることがない。
でも、その演奏はイージーリスニング的ではなく、イマジネーションに富んでいる。 端正で、まっすぐな音で、適切な打鍵の強さで、ここはこう弾くべき、
というタイミングを絶対に外さない完璧なタイム感。 誰かに似ているとか、誰の影響を受けているとか、そういう話を彼女のピアノは拒絶する。
魅力的とは言えないジャケット・デザイン、レーベルが押し付ける陳腐なイメージ戦略、そういうものでどれだけの数のリスナーを失っていることか。
このアルバムだって、お世辞にも買う気をそそる意匠だとはとても言えない。 でも、私はそのピアノの魅力に気付いてしまった。
ということで、彼女のアルバム探しの日々はこれからも続く。