廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

これこそロリンズ

2018年08月25日 | Jazz LP (RCA)

Sonny Rollins / Our Man In Jazz  ( 米 RCA-Victor LPM-2612 )


ソニー・ロリンズのアルバムに最高傑作という言葉を当てはめるのは難しい。 そもそもこの人自身がジャズの最高傑作なのであって、高いピークは無数にある。
だからロリンズの演奏のどこが好きか、何を求めるか、によって最高傑作というよりは好きなアルバムが人それぞれに決まってくるんだろうけど、私の場合は
特に好きなアルバムの1つにこれがある。 ここには私の好きなロリンズの音色と演奏のエッセンスがギュッと濃縮されているからだ。

復帰後のロリンズは50年代のように歌わなくなったと言われることがあるけど、私はそうは思わない。 50年代は歌物のコード進行に忠実に沿ってゆったりと
伸びやかに歌っていたのに対して、復帰後は原曲のコード進行から離れたフレーズを自由に吹くようになっていて、それが歌を歌わなくなったような印象に
繋がっているのかもしれない。 でもロリンズは変わらずよく歌っていて、本質的に何も変わっていないと思う。

このアルバムもメンバー構成がオーネットのバンドを連想させるせいか、50年代のロリンズに固執する人には概ね不評のようだが、ロリンズが元々持っていた
粗削りな大胆さが素で出ている演奏が私にはたまらない。 ベースとドラムが当時の流行りだった疾走感溢れる演奏をする中、ロリンズはまったく意に介さず
自分のペースで歌いまくっている。 そのフレーズはスピード感とキレの良さが抜群で、これこそロリンズじゃないか、と思う。

今から思えば、ドン・チェリーは役者としては明らかに力量不足。 この音楽には何も貢献できていない。 当時はイケイケの若手だったからの起用だろうけど、
メッキが剥がれてボロが出ている。 途中で吹くのを諦めている。 クランショウとヒギンズは頑張っていて、事実上ピアノレス・トリオの音楽と言っていい。

面白いのが、チェリー、クランショウ、ヒギンズの3人がすっかりロリンズの音楽観に飲み込まれてしまって戸惑っている様子が伺えること。 きっとこの3人は
今日はてっきりフリー・スタイルの演奏をやるものだとばかり思っていたのに、ロリンズ大先生がまったくそうじゃないものだから、やべぇ、なんか違ったぞ、
と戸惑いながら軌道修正している感じが伝わってくるのが微笑ましい。 チェリーに至っては「オレ、なんで呼ばれたんだろ・・・」と思ってたに違いない、絶対に。


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