Ella Fitzgeraid / Like Someone In Love ( 米 Verve MGV 4004 )
これも最近知ったことだけど、エラ・フィッツジェラルドも今年が生誕100周年なんだそうだ。 彼女の誕生日は4月25日だから、とっくに過ぎてしまっている。
私の場合はいつもこうだ。 何をやってもいつだって時すでに遅し、大体が手遅れなのだ。
私はエラの声には特に魅力を感じないから普段はあまり聴くことはないけれど、それでも何枚かは好きな作品はある。 これは地味な佳曲を自然な表情でもって
穏やかで素直に歌ったバラード集で、風に吹かれてカーテンがゆったりと揺れているような雰囲気が味わえる。 スタン・ゲッツがソロでオブリガートをつける曲が
何曲かあるけれど、全部ではないしどれも控えめな演奏なので、それはあまり期待せずに聴いたほうがいい。
力を入れずに、それでいて丁寧に歌っていく様子が見事で、何も趣向を凝らしていないようでいて実は隅から隅まで神経が行き届いている。 時速300km/hで
走れるフェラーリが制限速度でゆったりと青山通りを走っているような余裕を感じる。 それでいて、軽やかで後を引かない口当たりを愉しめる。
当たり前だけど、実力がなければこんなことはできない。 スキャットやダイナミックな歌という側面ばかりに光が当たりがちだけれど、そういうのとは全く違った
趣がこの作品にはある。
歌声の雰囲気も、他のゴージャズでファビュラスなアルバム群とは違う。 元々が黒人歌手らしくないストレートな声質だけど、ここでは技巧を排した歌い方を
しているので、より伸びやかで素朴な手触り感もある。 先入観からこの人が苦手に思うようなら、まずはこれを聴いてみるのがいいと思う。
ジャケット・デザインの印象を裏切らない内容に満足できるのではないだろうか。
エラとサラは本当に見た目で損してます。 バケモノだとかオカマだとか、こんな酷いことを言われるアーティストは他にいないのでは・・・
私もVerveのスタジオものは好きです。いつも後回しになって、中々買えてないんですけど。