Duke Ellington and his Orchestra / Bal Masque ( 米 Columbia CL 1282 )
1958年に数週間に渡ってエリントン楽団はマイアミにあるホテル・アメリカーナ内の "Bal Masque" というサパー・クラブに出演して、ダンス音楽を演奏した。
この時のことが随分印象に残ったようで、すぐにスタジオに入り、ライヴ演奏を模した録音をした。 拍手が入っているけれど、これはオーヴァー・ダブらしい。
ここにはレコーディングで取り上げるのは初めてという楽曲が複数含まれていて、その中にはその後も再録されなかったものも多く、レコードとしては1回限りの
演奏という珍しいレパートリーもあったりで、少し独特な感じが聴き終えた後に印象として残る。 サウンドはいつものエリントンだが、どことなくよそ行きな
感じとでもいうか。 古い流行り歌なんかもやっているので、全体的にはとてもポップな印象がある。 明るい曲調で、わかりやすく、穏やかな表情だ。
でも、アンサンブルには厚みがあり、聴き応えは十分にある。
更に、このレコードはおそろしく音がいい。 当時のコロンビアで最も高品質なモノラルサウンドが聴ける。 音場はクリアで楽器の音は艶やかに輝き、
重奏も分離よく聞き取れて、それでいてビッグ・バンドの演奏の分厚さや雄大さがきちんと表現されている。 こういうのを聴くと、エリントン楽団が
コロンビアと契約していて良かった、と心底思うのだ。