廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

アメリカと日本の感性の違い

2020年06月07日 | Jazz LP (Columbia)

V.A / The Sound Of Jazz  ( 米 Clumbia CL 1098 )


アメリカのCBSテレビが1957年12月8日に放送した "The Seven Lively Arts" という番組のサントラとして、コロンビアの30番街のスタジオで
大物たちが集まって新たに録音したアルバム。この番組は随分と気合いの入った制作だったようで、一流雑誌の Harper's がスポンサーとなり、
ジャック・スマイトが番組ディレクターに就き、ナット・ヘントフが音楽監修を務めるなど、錚々たる顔ぶれが並んでいる。そして、参加した
ジャズ・ミュージシャンも大物が揃えられた。

やはり何と言ってもビリー・ホリデイの "Fine And Mel'ow" が貴重で、レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスター、の3人が
バックで吹く夢の共演をしていて、シブいところではドク・チーサムのオブリガートが聴けるのが嬉しい。この1曲のためだけに買う価値がある。

このアルバムにはいろんな示唆が含まれていて、例えばそれは、メンバーの人選のセンスが日本人のそれとは大きく違うというところだったりする。
番組の内容はおそらくは一般大衆にジャズという音楽を紹介するものだったのだろうと想像するが、その際に日本人ならこういうメンツを並べるか、
という話である。ここにはデューク・エリントンもマイルス・デイヴィスもソニー・ロリンズもいない。

冒頭がレッド・アレンで幕を開けるというのが何ともシブいわけだが、ジミー・ジュフリーにしろ、ジミー・ラッシングにしろ、日本では誰からも
相手にされないブラインド・スポットにいるようなアーティストたちがビリー・ホリデイやカウント・ベイシーと堂々と肩を並べている。
日本人がジャズという音楽を紹介する場合に、こういうメンツで説明しようと考える人はいない。こういうところに、アメリカと日本での
ジャズへの認識の違い、感性の違いが如実に現れてくる。有名大物アーティストのアルバムを並べるだけで事を済ませようとする日本のジャズを
取り巻く状況の退屈さは、もはや手の施しようがない。

ジャズを聴き始めてまだ右も左もわからない頃にガイドとして何をお手本にするか、というのは重要になってくる。「名盤100選」は確かに便利
なガイドの1つだが、あれだけでは不十分なのだということが今になるとよくわかる。昔はネットがなくて頼れる情報が限られていたこともあり、
ああいう類いの本に頼るしか手段がなかったが、今はそういうものに縛られる必要はまったくないのだから、本物・偽物をよく見極めた上で
広く学べばいいと思う。我々に言わせれば、そういう面では本当に恵まれた時代になったのだから。


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