廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

"Porgy and Bess" の前哨戦だったのかもしれない

2019年02月16日 | Jazz LP (Pacific Jazz / World Pacific)

Gil Evans and His Orchestra / New Bottle Old Wine  ( 米 Pacific Jazz WP-1246 )


キャノンボール・アダレイが全面でリードを取る"キャノンボール・ウィズ・オーケストラ"という内容で、ギル・エヴァンスのアルバムとしては珍しい建付けだ。
このアルバムは1958年4~5月に録音されているが、同年7~8月にはマイルスの"ポーギーとベス"を録音している。 この2つはオーケストラのメンバーの
多くが同じだし、全体のサウンドの色合いや肌触りが同じであること、古い素材を使って主役に自由にスケールを吹かせているところなど共通点が多い。
そう考えると、このアルバムはマイルスとの録音の予行演習だったのではないか、という推測が成り立つ。 何と言ってもマイルスとの録音は注目を
集めるから、失敗は許されない。

ビ・バップ以降、コードに強く縛られるジャズという音楽に風穴を空けようとジョージ・ラッセルやギル・エヴァンスらがスケールを重要視したスコアを
書くようになり、それがモードに発展していくのがちょうどこの時期だ。 このアルバムでもオーケストラにはスイングさせず、ソリストのために
大きく空いたスペースを用意して、自由にスケールを取らせる。 そのためには長いソロを自由自在に操れるリード奏者が必要で、そう考えると
キャノンボールしかいない、ということになったのではないだろうか。 この頃のキャノンボールは無敵の存在だった。

広く空いた空間の中で、キャノンボールのアルトが舞う様は凄まじい。 厚みと輝くような光沢のあるアルトの音は本当に美しく、淀むことなく
なめらかなフレーズは尽きることなく流れて行く。 オーケストラのサウンドも繊細できめが細かく、キャノンボールのアルトと艶めかしく絡み合う。
ギル・エヴァンスの作品の中では際立って密なサウンドで、キャノンボールの明快なソロが音楽をわかりやすいものに仕上げていて非常に聴き易い。

パシフィック・ジャズ・レーベルとして最終的にはリチャード・ボックらがマスタリングをしたが、録音自体はニューヨークで行われている。
ジョージ・アヴァキャンのプロデュースだから、コロンビアのスタジオを使ったのかもしれない。 このレコードは音質が抜群に良い。 


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