Zoot Sims / Soprano Sax ( 独 Pablo 2310 770 )
ソプラノ・サックス1本で臨んだ穏健な中道派のズートとしては異色作という感じの1枚で、大御所評論家が跋扈していた昔は名盤と言われていたけれど、
今はそう言われることはなくなっていて、私も現在の認識のほうが正しいと思う。
まず、選曲があまりよくない。 平凡な楽曲ばかりで新鮮味がない。 次に、バックのピアノトリオがかなり雑な演奏をしている。 特にレイ・ブライアントの
アップテンポの曲での演奏が粗くて、叙情に欠けた潤いのない音楽になってしまっている。 例外的に "Bloos For Luise" というブルースでの演奏は
デリケートに弾いていて、全編こういう演奏をして欲しかった。 更に、全体的にリズムが一本調子で、聴いていてすぐに飽きがくる。 ソプラノ・サックスの
帯域の狭さという欠点を他の楽器群が補うべきなのにそういう配慮はなく、普通のセッションのように演奏するものだから、ソプラノの弱点がすごく目立つ。
このアルバムを聴いて思い出すのはベツレヘムの "Down Home"。 あのアルバムと同種の退屈さがある。 更には、コルトレーンの退屈さにも。
これで録音が良ければまだ救いもあるけど、のっぺりと平面的な音場感で聴いていても楽しくない。 ドイツ盤ならどうだろう、と手に取ってみたけど、
残念ながら特に音がいいということもなかった。 ピアノの透明感が少し上がったかな、という程度の差しか感じられなかった。
ズートの演奏そのものは悪いところはなく、どの楽器でも本当に上手く吹くなあと感心する。 だからこそ、良さを感じられないのが残念だと思う。
ジャケットデザインも雰囲気があって名盤の資格十分なんだけどな。 もう少し時間を置くと、よく感じられるようになるだろうか。